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モヒガンはなぜ苫小牧にIRをつくるのか マリオ・コントメルコスCEOに聞く【インタビュー】
北海道・苫小牧での統合型リゾート(IR)の進出を正式に発表した、モヒガン・ゲーミング&エンターテイメント。アメリカ・コネチカット州の「モヒガン・サン」を筆頭に、ペンシルベニア州、ルイジアナ州、ワシントン州、ニュージャージー州にも次々と展開し、今年6月にはカナダのナイアガラに進出。さらに韓国・仁川国際空港隣接地にも約5,500億円を投じたIR施設「Inspire」を建設中だ。さらに、北海道・苫小牧にも進出を発表するなど、勢いは留まることを知らない。
苫小牧に建設する計画の「INSPIRE ENTERTAINMENT RESORT HOKKAIDO」は、木を組み上げたような外観の3棟のホテルタワー、会議場やエキスポセンター、1万席以上を備えるアリーナ、パビリオンから構成されている。1万平方メートル超の飲食スペース、体験型の屋外ショップ、シネマコンプレックスも擁する。
アジアで2箇所目となるIRを、なぜ苫小牧に作るのか。マリオ・コントメルコス最高経営責任者(CEO)に聞いた。
ーーなぜ苫小牧なのか。北海道では江別、北広島、留寿都、釧路もある。その中で苫小牧に絞った理由はなぜか。
苫小牧の地理にある。景観がコネチカットに似ていて、四季のある場所としてはモヒガン族は四季を通じた成功をするリゾートを建てることを長所としているので、それを魅力的に感じている。四季を通じてオペレーションできるのは他のオペレーターにはないので比較優位にも着目した。
インフラに関しても苫小牧は魅力的。苫小牧は高速道路に隣接してIRが建てられていることは送客の効率性にとって良いこと。新千歳空港からわずか15分の距離というのも戦略的で、そういったことがアピールポイントとして感じている。
北海道の数々の地域の首長と話をすると、やはり苫小牧が有力であるというコンセンサスが取れている。北海道がIRを誘致する時に苫小牧が競争力があると言われている。地域の自治体の協力や姿勢もとても大事で、苫小牧はいまのところ非常にIRに好意を示したり、積極的な姿勢を示しているので、そういった協力が得られる点も魅力に感じている。
ーー苫小牧進出にすでに名乗りを上げた、ハードロックやシーザーズ・エンターテインメントとどのように戦っていくか。
私どもがモヒガンについて皆様に知ってもらうときには、誰にとってもアピールができる話をしている。それはモヒガンがビジネスアプローチとして長期的な目線をもっていて、世代的なアプローチから事業を行っているというストーリー。コミュニティにとって最もサステナブルなビジネスプランを提供することを常に邁進してきた。1年先、1ヶ月先のことではなく、25年、50年、100年ともっと長い時間を考えた上でビジネスの選択ををしているという話をすると、いままでの経験から言うと、皆様にとって魅力的な話で、人々がもっと寄ってくる話だった。今後は他社との競争でアピールをしていきたい。
北海道の方にとって魅力となるのは、モヒガンは自然、母なる大地を尊敬しているかということ、会社の歴史としても、自然に対するリスペクトは重要な一角を占めている。実際にいままで努力してきたことをお話しすることで、皆様の期待に添えるリゾートづくりに努めていきたい。北海道の美しい景観に溶け込むようなリゾートづくりに努めていきたい。
最後に、四季のある環境という点に戻る。本当にゲーミングオペレーターが数々あるなかで、式を通じて成功しているのはモヒガンだけだと自身をもって言える。特に世界クラスのリゾートを、コネチカット州郊外で運営し、毎年継続的に1100万人以上の集客を上げているという実績は他にない。北海道はこういったノウハウからしてもベストフィットといえる。
ーーモヒガンが100%を出資するのか、コンソーシアムとして他の企業とのパートナーシップを組んでいくのか。コンソーシアムの場合はどれくらいの出資比率を目指すのか。
まず、モヒガンのマネジメントチームがどれだけ優秀なチームかということをお話したい。世界各地でのIRを建てるにあたり、100億米ドルの資金を調達することに成功してきた。
2つ目は、協力体制やパートナーシップ構築の優秀さ。世界中にあるどのモヒガンのリゾートをみても、とても重要なパートナーシップを組まれてきたことがわかる。そのパートナーシップの内実は公私両方、政府や企業、いろいろなパートナーシップを組んでいる。共通して言えるのは長期にわたるパートナーシップ、双方にとってメリットがあるパートナーシップづくり。2つの点を通して、出資の比率は考えていきたい。
モヒガンの世界展開では、(カナダの)ナイアガラや韓国(の仁川国際空港隣接地)、どれをとってもパートナーシップを追求してきた側面がとても強くある。今後日本でのパートナーシップにもますます力をいれていく。今現在では具体的なパーセンテージはお答えできないが、近い将来お答えできると思う。
ーー出資比率は過半数を目指すのか、それ以下なのか。
いままでのリゾート開発をみるとわかるが、モヒガンとしてはマイノリティ、マジョリティどちらの出資比率でも基本的にOKとしている。北海道でIRを作るにあたって、出資比率の決め手となるのは、どれだけコミュニティへの利益を最大化できるかになる。
ーー苫小牧での開業時期の見通しは。
実際のリゾートの完成までにはいくつものマイルストーンがある。要所要所で遅れがあれば、オープンがずれるという懸念がある。それがない想定で話すと、苫小牧が年末までに正式に手を上げて、次の年の終わり(2020年末)までにオペレーター選択に至ると思う。そこまでいけば、3〜4年(2023年〜24年)で完成するのではないかと考えている。
ーー仁川国際空港隣接地で開発中のカジノ、すでに先行しているパラダイスが苦戦している。アジア全体でもマカオやシンガポールでの拡張も視野にある。そのような中で北東アジア全体をどうみているか。
パラダイスと(モヒガンが展開する)インスパイアの最大の違いは、インスパイアが北アジア唯一のIRになること。15,000席を備えたアリーナやパラマウントの映画コンテンツを持ったテーマパークはインスパイアを北アジア唯一のIRとして成功させる優位点になる。経験豊富なグローバルチームを持っているので、そういったチームの経験を踏まえても成功は確実だと考えている。
北東アジアのゲーム市場は東南アジアと比べてまだ未熟であるということ。マカオやシンガポールなど、東南アジアにIRは50施設くらいあるが、対照的に北東アジアに本当のIRはいくつかしかない。北東アジアの7億人の人口規模を考えたり、韓国や日本からほとんどの大都市が2〜3時間の近い距離にあるということは、今後北東アジアでIRが増えることで市場を開拓、発展できると考えている。
■プロフィール
マリオ・コントメルコス(Mario Kontomerkos)
モヒガン・ゲーミング・エンターテイメント 最高経営責任者(CEO)
コーネル大学卒。ペン・ナショナル・ゲーミング、マグネター・キャピタル・パートナーズ、JPモルガン・セキュリティース、リーマン・ブラザーズなどで財務、研究、分析業務に従事。TPGキャピタルのコンサルタントとして、ゲーム業界最大のレバレッジド・バイアウトとなった、ハラーズ・エンターテインメントの買収にも尽力した。2011年9月にモヒガン・ゲーミング・エンターテインメントに入社。最高財務責任者を経て現職。