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航空機整備の専門企業「MRO Japan」、コロナ禍で黒字転換のワケ
飛行機の整備や塗装を行う企業として航空ファンにはよく知られる「MRO Japan」が、コロナ禍で業績を伸ばしているという。航空業界全体は今も厳しい状況が続いているが、これにはどのような背景があるのだろうか。現地で話を聞いてきた。
そもそもMROとは「Maintenance(整備)」「Repair(修理)」「Overhaul(オーバーホール)」の頭文字を取ったもので、航空機の整備や修理に関わる事業のことを指す。MRO Japanは2015年、日本で唯一のMRO専門企業として、ANAホールディングス(ANAHD)や航空機関連部品の製造を手掛けるジャムコ、三菱重工業、沖縄県内の銀行などの出資により設立された。設立当初から本店は那覇市に置いているが、当初は伊丹空港で整備事業を行っていた。2019年に那覇空港の格納庫が完成したことに合わせ、機能を沖縄事業所に移した。
格納庫はボーイング737型機やエアバスA320型機などに対応する小型機格納庫と、ボーイング777型機クラスまで対応できる大型機格納庫に分かれており、エアバスA380型機以外の旅客機には対応できる。小型機格納庫は最大3機、大型機格納庫は1機まで格納可能だ。なお、格納庫は沖縄県が建設・所有し、MRO Japanに賃貸する形をとっている。
飛行機の日常的な整備は各キャリアの自社設備で行われることが多いが、C整備など工数の多い作業はこれまで、コストの安い中国などのMRO企業に委託することがほとんどだった。MRO Japanは、日本企業の技術力と品質の高さを強みにしたMRO企業として、アジア諸国に近接する那覇空港の地理的優位性を活かし、国内のみならずアジア全体の機体整備需要を取り込むことを目指している。これまでに全日本空輸(ANA)をはじめとする国内の航空会社のほか、スターラックス航空や香港エクスプレス航空といった海外の航空会社の委託も受け、これまでに整備を手掛けた機体は500機にのぼる(2021年3月時点)。現在取得しているのは国土交通省交通局(JCAB)の認定のみだが、今年中に欧州航空安全庁(EASA)の認定も取得する予定だ。
機体を整備に出す際は自社の検査員を現地に派遣しなければならないため、コロナ禍の現在は海外キャリアからの受注に影響が出ている。その一方、海外に委託できなくなった国内の航空会社がMRO Japanに委託するケースが増えているという。これが業績拡大の大きな理由だ。このような背景により、2020年度の決算では、目標を1年前倒しして単年度黒字化を達成。今年度も第1四半期は黒字で着地している。MRO Japanの臼田洋樹取締役はコロナ禍を「国内のエアラインに我々を知ってもらうきっかけになった」と捉えており、継続的な受注につなげたいと話している。
MRO Japanの整備品質や技術力について、臼田取締役は「トップクラスだと自負している」と胸を張る。価格面では海外のMRO企業と比べて課題は残るものの、規模を拡大することでコストを下げて競争力を高めていく考えだ。まずは国内需要で実績を重ね、アフターコロナではアジアを代表するMRO企業として地位を確立できるか注目だ。