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新型特急HC85系、新幹線にもないJR東海初の“あるもの”がグリーン車に登場
JR東海の新型特急車両「HC85系」が、いよいよ7月1日にデビューする。特急「ひだ」「南紀」で30年以上にわたって使用されているキハ85系に代わる車両で、2023年度までに計64両が投入される計画だ。すでに量産先行車を含め4両3編成が完成しており、高山線などで試運転が行われている。
編成のバリエーションは3種類。普通車3両、グリーン車1両の4両編成と、普通車のみの4両編成、同じく普通車のみの2両編成が登場する。座席定員は普通車が40〜68名、グリーン車が36名だ。
▲車体側面にはオレンジ色と青色のグラデーションカラーのシンボルマークが描かれている。飛騨の紅葉と南紀の海の色をイメージしているという
グリーン車のシートは、沿線の新緑や河川、夕暮れ空をイメージしたグラデーションカラーで“落ち着いた上質感”が表現されている。リクライニングに合わせて座面も沈み込む構造で、さらにゆったりと座れるようになった。
大きな特徴はヘッドレストが設置されたこと。これまで東海道新幹線の車両にもなかったもので、JR東海の車両として初めてだ。車両設計の担当者によると、新幹線と違い横揺れが出やすい線区を走る車両であることから、快適性向上を狙って新設を決めたのだという。さらに、セミアクティブ制振制御装置による横揺れの軽減機能もある。その他、フットレストやスライド式の背面テーブル、読書灯など、新幹線と同じような設備を備えている。
普通車のシートは紅葉や祭り、花火をイメージした色で“明るいワクワク感”を表現。全席の肘掛け部に加え、車いすスペースにもコンセントが設置されている。全車両に設けられた荷物スペースは、3辺合計160〜250センチの特大荷物にも対応している。
ところで近年の車両では日除けはブラインドが主流である中、HC85系はキハ85系と変わらずカーテンが採用されている。ブラインドは構造上どうしても窓の間に仕切りを入れなくてはならないことから、広い窓の視界を生かすためにカーテンにしているのだという。
デッキには沿線地域の工芸品を展示する「ナノミュージアム」が設けられた。岐阜団扇や美濃和紙、伊勢型紙、飛騨春慶、一位一刀彫など、車両ごとに異なる作品が飾られる。
▲車内の情報提供用ディスプレイには発電状況が表示されることも
エンジンによる電力と回生電力を組み合わせて動力源とするハイブリッド式車両となったことで、キハ85系と比較して各性能も大きく向上。気動車特有の変速機がないことで乗り心地が改善し、防振ゴムの二重化や、二重床構造の採用で静寂性も上がった。環境性能の面では、駅停車時はエンジンを停止して蓄電池から電力を賄うことで排気ガスや騒音を抑制している。量産先行車の走行試験では、現行のキハ85系と比較して燃費が約35%向上することを確認したという。
デビューは7月1日の名古屋発、高山行きの「ひだ1号」。まずは4両2編成が投入され、「ひだ4・10・17号」にも投入される。8月1日からは3編成体制となり、同日から「ひだ15号」、翌2日から「ひだ2号」にも投入。名古屋〜高山駅間の1日3往復がHC85系となる。今後は大阪・富山方面に乗り入れる列車についても投入を検討しているという。