シンガポール航空、東京/成田〜シンガポール線へのエアバスA380型機投入期間変更 2025年5月1日から
羽田に眠るANAの“TECHNICAL TRAINING”機 その正体は?
側面に“ANA TECHNICAL TRAINING”という文字が入った全日本空輸(ANA)のこの機体。羽田空港のANA格納庫付近に駐機しているのを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。あるときは格納庫の中に収容されていたり、またある時は外に出ていたりするが、飛んでいる姿を見たことはない。
実はこれ、2018年に退役した機体をANAが整備訓練専用機として活用しているもの。ANAウイングスがかつて運航していたボーイング737-500型機のうちの1機(機体記号:JA301K)で、「スーパードルフィン」の愛称で親しまれていた。全長31メートル、全幅28.9メートル、全高11.1メートルのずんぐりとしたイルカのような形状であることなどからこの名が付けられ、エンジンカウルにはイルカのイラストが描かれている。
ANAでは以前まで、技術系の新入社員には講義とモックアップで基礎教育を行ってから、実際に運航する機材を使った実技経験を行っていた。実技経験は航空機の稼働スケジュールの合間を縫って行うため、「習得するまでにかなりの時間を要していた」といい、早い時期から実技経験を積める手段の確保が課題となっていた。
▲現役時のボーイング737-500型機(写真は2020年退役のJA306K)
そこで白羽の矢が立ったのがこのJA301Kというわけだ。退役機を1機丸ごと整備訓練専用とすることで、より多くの新入社員が同時に実技訓練を行えるようになった。また、運航中の機材ではできない“失敗からの経験”を学ばせることができるなど、従来では困難だった訓練が可能になったという。
JA301Kは1997年4月21日に製造された機体で、当時のエアーニッポンが導入。その後、エア・ドゥなどでも運航された。ラストフライトは2018年2月1日の小松〜福岡線NH1231便だった。退役までの21年間の総飛行時間は46,864時間31分、総サイクル数は48,254サイクル。その後、同年7月から整備訓練に導入された。
現在は飛行することはできないが、外観、内装ともに概ね退役時の状態を保っており、「スーパードルフィン」の特徴だったエンジンカウルのイルカも健在。機内にはチューブ式イヤホン差し込み口や灰皿が備え付けられたシートが残っており、懐かしい雰囲気を体感できる。
この飛行機により親しみを持ってもらおうと、ANAウイングスは今年からJA301Kを活用したイベントを企画。5月14・15日には整備士や乗務員から説明を受けながら機内を見学できるツアーを行った。次回の開催は未定だが、同社は継続的な開催を検討しているという。次の機会が訪れた際は、この「飛ばないイルカ」で往年の機内を味わってみてはいかがだろうか。