ロンドンやドバイ就航、コロナ後の事業拡大は エアアジアXのベンジャミン・イスマイルCEOに聞く【インタビュー】

タイ・エアアジアX(エアバスA330-900neo)

クアラルンプールからロンドン、ドバイ、イスタンブールへの就航を発表した、エアアジアX。10月からは日本への運航も再開し、クアラルンプールから既存7路線の運航を順次再開する計画だ。

発表に合わせ、エアアジアXのベンジャミン・イスマイル最高経営責任者(CEO)は、本誌のインタビューに応じた。

ーマレーシアやタイでは、観光産業の多くが通常に戻りつつある。クアラルンプールや東南アジアの新型コロナウイルスの状況は。
正常な状態に戻りつつあります。マレーシアではPCR検査も何も必要なく、観光客対して市場が完全にオープンになっていると思います。タイはつい最近、PCR検査の要件を外したと思います。どちらの市場も完全にオープンになっており、私たちは徐々に観光客の来訪を促しています。

ー東南アジアの多くの航空会社がすでに路線を再開している中で、エアアジアXの路線再開が遅れている理由は何か。
アジアでは、フライトを再開した航空会社も少しはありますが、再開したのは大抵フルサービスキャリアであることにお気づきでしょうか。政府系の航空会社なので、満席でなくても運航する能力があります。

私たちは民間航空会社なので、とても難しいのです。そのようなフライトを運航する際には、需要が回復し、フライトが満席になるほどのマーケットがあることを確認する必要があります。私たちが運航を再開する時、市場が完全に準備できていることを確認し、会社がこれ以上損失を出す必要がないようにしたいのです。私が飛ぶこの地域(アジア)市場の多くは、技術的にまだ完全にオープンになっていません。欧州や米国は100%オープンなので、しばらくは比較できません。

市場を見れば、私は日本は技術的に開いていない、台湾は開いているが4日間の検疫が必要、中国は閉じている、韓国は開いてるものの出発前と到着後にPCR検査が必要、オーストラリアはビザを取得することが非常に困難、というわけで、もしこれらの国が正常に戻っていれば、私たちにとっては簡単なのですが、それが私たちのフライトに影響を与えないことを確認しなければならないのです。

ー日本路線の運航計画について発表された。日本路線がコロナ前の水準に戻るのはいつを予定しているか。
羽田、関空、札幌への運航再開を発表したものの、需要があまりありません。まず、1機あたり平日180人、週末に160人の乗客数制限があること、さらに申請が承認されるかどうかにかかっていることからです。

多くのフライトが9月〜10月に再開し、その後の状況を確認します。次の数か月で、日本は我々のトップとなり、他のほとんどのアジアの国がフルオープンになることを望んでいます。新型コロナウイルス前の水準には、2023年の終わりに回復するとみています。

ー日本への入国制限はビジネスにどのような影響を与えますか?
ご存知の通り、現在は運賃を上げる必要があるため、いくつかの価格が上がっています。我々はフライトのコストをカバーすることを確認する必要があり、運賃を上げなければならない。しかし運賃を上げると、需要に影響を与えます。一般の人々はPCR検査や承認が必要で、ビザが取得できるかどうか分からないので、安心できず、厳しい状況が続くと思います。これらが緩和されるまで、我々に対して影響を与え続けるでしょう。

ーアジアでのLCCビジネスの今後をどう考えているか。例えば日本と韓国の路線はコロナ前も競争が激しかった。
私たちは常に、需要が非常に強いと思われる市場で、うまくやるように努力してきたと思うのです。日本や韓国は、マレーシアの人々にとって大きな市場です。市場が完全にオープンである限り、私は非常に自信があります。歴史的に見ても、私たちはこの2つのルートでうまくやり、利益を上げてきました。願わくば、回復するのを待ちましょう。非常に低いコスト構造を持っている限り、それは我々にとって有益なことだと思います。

ードバイやロンドン、イスタンブールというアジア以外の都市に就航を決めた理由はなにか。アジアでのビジネスには限界があると考えているのか。
ロンドンは昔からマレーシア人にとって好きな目的地でした。ファンが多いものの航空券はとても高いですから、(就航することは)私たちにとって非常に重要なことです。ドバイはロンドンに行く人に対する中継地点に過ぎませんが、ドバイとロンドンを売り込むことになります。イスタンブールも同様に、マレーシア人にとって非常に人気のある目的地です。この2つの目的地は、私たちが市場に刺激を与えたいと思った場所です。

ー日本からアメリカ本土への就航計画もあった。これらの路線についてはどう考えているか。
それは計画通りですが、現時点では、マレーシアは(FAAの)カテゴリー2の下にありますが、カテゴリー1にアップグレードされたら、申請できると思います。現在、我々はホノルルへしか飛んでいませんが、承認が得られれば、ロサンゼルス、サンフランシスコへの申請を考えています。日本でのストップオーバーとなり、成田もしくは関空を検討しています。

ーZIPAIRやエアージャパンの日本を拠点とした中長距離LCCビジネスについて、どう考えるか。
あなたや私のような若者はローコストキャリアであること気にしませんが、日本ではLCCに乗るように高齢者を説得するのは非常に困難だと思います。ですから私たちは、日本の若者の間での需要を潜在的に確認する必要があります。

ー日本ではエアアジア・ジャパンの倒産によってエアアジアのブランドイメージが悪化している。問題をどう捉えているか。
私たちは15年間、東京、大阪、札幌へ運航してきました。福岡や沖縄にも飛んでいました。日本には大きな市場、大きなブランド(認知度)があります。ですから私たちのブランドに全く影響を与えないことを願っています。

ー新たに始めた貨物事業はエアアジアXの売上に今後どれほどのインパクトを与えると考えているか。
新型コロナウイルスの渦中では、貨物の価格も多く、良いビジネスができました。現在では、航空会社の乗客が増え、貨物機のビジネスが減速しています。我々は、両方を同時に行うことを試み、その結果をみています。旅客機と貨物機の両方に同時に依存することになると思います。