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「飛行機の墓場」へ飛ばずに国内解体、JALグループ機体リサイクルの取り組み【レポート】
JALエンジニアリングは、日本航空(JAL)の退役したボーイング777-200型機(機体記号:JA772J)の解体中の作業の一部を公開するとともに、JALグループの機体リサイクルへの取り組みや今後の展望を明かした。
同機は、2005年4月にデリバリーされ、同年6月より運用を開始、飛行時間は34,788時間で飛行回数は30,391回、国内線で主に札幌/千歳・大阪/伊丹・福岡・沖縄/那覇路線に投入されていた。
国内で2機目の機体リサイクル、SDGsにも貢献
JALエンジニアリング事業推進部の亀田博文氏は、新型コロナウイルス感染症の影響など事業環境の変動により燃費の良い最新機材への更新、事業計画変更に伴い退役機材が世界中で増加していることや、航空機を構成する各種資源をリサイクルするESG経営の世界的な広がりによって、航空機のリサイクルに注目が集まっていると、機体リサイクルの背景を紹介した。
国内で機体リサイクルを実施することによって、海外へのフェリーフライトが不要となる。また、燃料削減や資源リサイクルとしての活用の観点から、SDGsにも貢献できるとという。
リサイクルした部品は用途は3つのカテゴリーに分類される。1つ目が航空機部品として他の同型機材で再利用、2つ目に航空機には使うことができない部品や素材に加工を加えてアップサイクル品として販売、3つ目にアルミニウム・鉄・金属などを素材ごとに再資源化を目指す。
航空機はエアライン最大のアセットであり、退役した後も責任をもって安全に機体リサイクルを実施することで、JALの中期計画にも掲げているESG戦略を推進するという。
JALグループで初めて国内で機体の解体を実施したボーイング777-300型機(機体記号:JA8945)と同じく、解体作業は豊富産業グループの三豊工業が担当する。同社は、乗用車や大型トラック、バス、航空機、船舶などの解体を広く手がけ、「JA8945」も安全に解体作業を実施した実績がある。
また、解体後のリサイクルでも大型処理施設や非鉄金属高度選別設備など、必要な設備を有しており、解体処理、運搬、破砕、熔解、製品化をグループ内で一元的に対応できることが理由に選定されたという。解体に要する期間は1機あたりおよそ1か月程度だという。
亀田氏は、退役後の航空機の利活用方法として、他社へ売却またはリサイクルの2パターンがあるが、経済性を含めた総合的な判断によってその都度判断を行っていると説明した。
航空機に使われた部品を「ガチャ」で販売、座席シートをホテルに活用
部品センター企画グループの矢田貝弦氏は、航空機部品を活用した製作販売品について説明を行った。
航空機を構成する部品は約300万点あり、その部品は飛行回数や時間などに厳しい基準が設けられている。使用中は非常に手をかけた整備をしているが、少しでも安全な飛行に適さなくなった部品は取り下ろしされる。
これらの部品は、もともとは航空機が飛行するための部品であり、航空機には使えなくなった後でも一般材料としては十分に使用可能という。また、フォルムが美しいことや流通量が限られること、何万回も空を飛んだ実績に加えて、整備士が手間をかけて整備した技術力という背景から、非常に高い付加価値が見いだせると語った。また、リサイクル品の販売が広がるなど、捨てずに再利用する取り組みが少しずつ社会に浸透し、市場が拡大しているとした。
これまで、JALグループでは2021年10月に同社グループ初となるアップサイクル品として、年間2,000着が定期交換によって取り下ろされるライフベストを素材としたポーチを1,000個限定でオンライン販売した。同商品は人気が集中し、販売の一時停止などがあったが、発売から5日間で完売した。
その後、廃棄量の多い廃材から着手し、シートベルトキーホルダー、ペンケース、バゲージタグ、シートカバーで作ったバッグなどの小物を中心に、アップサイクル品の販売を行ってきた。
2021年12月にはエンジンのファンブレードにアートを施した廃材アート展を開催、1月には小さいボルトなどの廃棄品を集めて「整備のお仕事ガチャ」として販売したりと、アップサイクル品の活用の幅を広げている。
「整備のお仕事ガチャ」は、小さいながらも実際に飛行機に使われていた部品がほぼそのまま手に入ることもあり非常に好評。これまでに第1弾から第4弾までを販売したが、いずれも完売しているという。第4弾の内容は、部品整理タグ、配水管固定カップリング、読書灯のカバーなどに加え、もう1品をお楽しみのシークレット商品として販売された。
座席シートなどの大きな部品も、新浦安の「東京ベイ東急ホテル」で、機内空間を表現した客室に転用され好評という。同ホテルでは第2弾の取り組みとして、航空機のホイールを使ったテーブルや座席頭上のリーディングライトを使ったテーブルライトなど、廃材を活用した家具や調度品を備える客室を用意した。この客室は12月2日より宿泊可能となる。
同氏は、色々なバリエーションの廃材ある中で、それぞれに合わせた活用方法を模索し、今後も廃材の活用に力を入れていきたい。とまとめた。