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韓国人激増も「日本人は特別」 コロナ禍経たサイパン、若年層取り込みでイメージ払拭なるか
9月1日、ユナイテッド航空は東京/成田〜サイパン線を開設した。日本人にとって身近なリゾートとして知られる太平洋の小さな島に、久々に日本からの直行便が復活した。
サイパンはかつて、日本航空(JAL)のボーイング747型機が乗り入れるなど隆盛を極めていたが、2018年5月にデルタ航空が東京/成田〜サイパン線から撤退したことで直行便が消滅。2019年11月にはスカイマークが初めての国際線として同路線を開設したものの、直後にコロナ禍に見舞われ、2020年3月25日の運航を最後に無期限運休となっている。
直行便で約3時間の南国リゾート。数十年前に行ったきりという人も少なくないだろう。コロナ禍を経て、サイパンの今はどうなっているのか。
コロナ禍は一段落も、渡航者はワクチン必須
最初に、サイパンの現在の入境条件を整理しておく。記事掲載時点では米国本土の条件と同様、2回以上のワクチン接種証明の提示が必須となっている。また、航空便のチェックイン時に宣誓書の記入が必要となるが、それらを除けばコロナ禍以前と同じように渡航することができる。
域内の感染者数は2月をピークに減少し続け、9月には北マリアナ諸島全体で49人とほぼ落ち着いた。市中では屋内も含めてマスク着用は任意となっている。
LCC台頭で韓国人激増、ホテルにも韓国資本
旅行先の多様化や便数の縮小を背景にサイパンから日本人が徐々に減少していった2000年〜2010年代、代わって島内で見られるようになったのは韓国人や中国人だった。スカイマーク就航直前の2019年10月の外国人渡航者を見ると、日本人がわずか487人に留まる一方、中国人は1.1万人超、韓国人は2万人超という状況だった(マリアナ政府観光局(MVA)の統計による)。
コロナ禍を経て、現在も出国が厳しく制限されている中国からの観光客は消滅。しかし、韓国からはアシアナ航空、チェジュ航空、ティーウェイ航空が積極的に便を飛ばしており、韓国人渡航者はすでに1か月あたり1万人程度の水準にまで回復している。
▲かつてのホテル・ニッコー・サイパンは韓国資本に経営権が移り、現在はケンジントンホテルサイパンとなっている
ホテルのプールや朝食会場を訪れると、周囲から聞こえてくるのは英語よりも韓国語だ。ホテル関係者によれば、最近は女性グループで訪れる韓国人の宿泊が多い傾向だという。街中に出るとさすがにローカルの英語が耳に入るが、最大の繁華街であるガラパンや、船で15分で行ける観光客に人気の離島・マニャガハ島では韓国人の姿が目立つ。
一方で、日本人観光客の姿はほとんどない。先のMVAの統計によれば、10月の日本人渡航者はわずか228人。とはいえ、日本人の姿が見当たらないという状況は他国でも同様だ。旅行支援で国内旅行が盛況となっている現在は、海外に意識が向かないという背景があるのだろう。
ミドル世代には“過去”のイメージ? 若年層取り込みで払拭なるか
▲成田空港で開かれたサイパン線就航式典で固く握手を交わすトーレス知事(左)とユナイテッド航空の高橋亨日本・ミクロネシア地区営業担当支社長
40代以上の日本人から見れば、サイパンには“かつて賑わった観光地”というイメージがあるかもしれない。しかし、北マリアナ諸島のラルフ・トーレス知事は「サイパンの経済基盤は日本の統治時代から始まっている。今でも日本のプライオリティは常に高く、日本人は特別だ」と日本人に期待を寄せ続ける。
▲サイパン空港の案内板には“味のある”日本語併記も。一方、ハングルは見当たらない
MVAもユナイテッド航空の就航を機に、日本人に向けたプロモーションを展開。まずは到着・出発便に合わせたホテル行き無料シャトルバスの運行を開始。島内で使える50米ドルクーポンの配布、ゴルフやダイビング、政府公認ガイドによる歴史文化ツアーの無料キャンペーンなど次々打ち出している。
特徴的なのは、若年層を意識したプロモーションにも積極的という点だ。新婚カップルには200米ドルのクーポンをプレゼントするほか、インフルエンサーを使ったマーケティングも推し進めている。サイパンに対する固定観念がない若い世代を取り込み、“過去”のレッテルを剥がしたいという意図がうかがえる。現地の観光関係者も、「そもそもサイパンというデスティネーションが若い日本人に認知されていない。まずは知ってもらうことが必要」と話す。
現在は週3便のみというフライト数、ラグジュアリークラスのホテルのバリエーション、周辺のビーチリゾートとの差別化など、課題はまだまだ多い。コロナ禍が収束に向かい、海外への意識も徐々に戻っていく中、サイパンは“復活”を遂げることはできるだろうか。