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どうなる?2023年の旅行事情 激動の2022年をTRAICYの人気記事で振り返る【コラム】
新年あけましておめでとうございます。2022年から2023年にかけての年末年始は、日本国内では新型コロナウイルスによる行動制限がほとんどなく、久しぶりに羽を伸ばして旅行や帰省をされた方も多いのではないだろうか。
また、海外との出入国も制限緩和が進み、所定のワクチン接種を行っていれば、コロナ禍前と同じ感覚で海外旅行に行くこともできるようになったのも大きな変化だろう。一方で、中国本土の感染状況がここ連日報道されていて、また日本国内の感染状況・医療状況についても、残念ながら思わしい状況ではない。
尽力されている医療関係者をはじめとしたエッセンシャルワーカーの皆さんに感謝しているが、彼らの尽力にも関わらず、難しい舵取りが続いている現状を踏まえると、少なくとも日本においては新型コロナウイルスを意識しながら社会がまわっていく、いわゆる「ウィズコロナ」は当面の間続くのかもしれない、と思いを巡らせている。
今回の記事では、そんな激動の2022年を、TRAICYのアクセス数の多かった記事とともに振り返りながら、2023年の旅行を取り巻く状況がどうなるかを考察していくことにする。
進む、水際対策の緩和
2022年の大きな動きとして、出入国に関する新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたことが挙げられるだろう。
欧米では、ほとんどの新型コロナウイルス関連の出入国規制が緩和されていたのに対し、日本を含むアジア圏では、規制緩和が遅れていた。しかし、重い腰をあげるように、「ワクチン3回目接種者、出国前72時間以内の検査証明求めず 9月7日から」と、規制が緩和されることとなった。2022年12月時点で日本への入国に関して、ワクチンを3回接種している場合は、入国後の検査・待機などが必要なくなった。
一方で、年の瀬の12月30日からは「中国本土からの入国者に対する検疫強化 入国前検査開始」とあるように、ゼロコロナ政策からの方針転換に伴い、急激に感染者数が増加したとみられる中国本土からの入国者に対する検疫を強化した。
政府は、水際対策緩和の方針は変えずに、感染状況が悪化している中国の状況を注視し対応する構えだ。早速、強化した検疫で感染者が確認されており、(「空港検疫でコロナ感染92名確認 90名は中国から、同日から水際措置強化」)、予断を許さない状況は続きそうだ。
中国の状況を除けば、海外旅行の状況は緩やかにコロナ禍前に戻っている。複雑な出入国制限を嫌い、高くてもよいからフルサービスキャリア・直行便で安心して旅行したいという動きもあったが、昨今では、アジア圏を中心に格安航空会社(LCC)の便数が増え、乗り継ぎを伴う周遊型の旅行をする人も増えつつあるようだ。
「水際対策緩和」2023年の展望 旅行業界の”リハビリ”続く
新型コロナウイルスによる制限の緩和は(重大な状況の変化がない限り)引き続き続くとみられる。ただ、コロナ禍による需要低下に伴い、旅行全般のキャパシティが低下していて、全世界的に「オーバーツーリズム」の状況が続きそうだ。いたるところで空港の保安検査場が混雑しているのはその最たる例だ(例:「羽田空港、第3ターミナル保安検査場混雑で早めの空港到着を呼びかけ」)。
旅行者も、旅行を受け入れる側も、引き続き”リハビリ”が続く一年になりそうだ。
弱体化する日本円と暴走した燃油高
2022年は、急激にドル高・円安が進んだ。2022年1月は1ドル110円付近だったのが、10月には1ドル150円に。その後も乱高下が続いた。
投機的な意味合いが強いドル円相場はともかく、対アジア圏通貨でも、円安傾向が目立った。2022年12月時点で、1台湾ドルは4.28円、1シンガポールドルは97.8円、1タイバーツは3.8円、1中国元は19.01円などと、コロナ禍前に比べて2割程度円安海外通貨高の傾向が続いている。
簡単に言えば、コロナ禍前と同じ気分で海外に行ったら、全部2割値上げしていた…という状況になっているわけで、日本円の通貨としての弱体化を感じずにいられない。
航空券にのしかかる「燃油サーチャージ」。円安傾向が続いたことに加え、ロシアによるウクライナ侵攻による世界情勢の不安定化で、燃油価格が暴騰。市場の燃油価格を日本円に換算して計算する、燃油サーチャージの設定金額は、全日本空輸(ANA)・日本航空(JAL)ともに、欧米往復で一時11万円となった。
JALの赤坂社長は、10月に円安傾向で観光需要は戻りが鈍く、ビジネス需要も「企業に海外出張の機運がまだない」ことを踏まえ、「日本から海外への出発は『かなり弱い』」と指摘した(JAL赤坂社長、水際緩和は“チャンス” 訪日予約3倍も日本発は「かなり弱い」)。
「弱体化する日本円と暴走した燃油高」2023年の展望 どこまでコロナ禍前に戻れるか?
コロナ禍においても、比較的安定して(低成長率ながら)成長していた日本経済を見直す動きもあり、為替市場は比較的落ち着きのない展開も予測される。ウクライナ情勢は引き続き先行きが見えず、燃油市場は比較的落ち着いてきたため、2022年よりは燃油サーチャージは4月以降に引き下げられるとの見方が大勢だ。
コロナ禍の比較的落ち着いた情勢に戻れるかは未知数だ。為替や燃油の状況も考慮しながらも、行きたいところに行く、やりたいことをやるという姿勢があれば、2022年よりも旅行を楽しめると信じている。
「”骨抜き”版Go To」こと「全国旅行支援」
国内に話題を移そう。2022年秋から始まった「全国旅行支援」は、夏までに実施されていた各都道府県の「県民割」を延長する形でスタート。大して意味をなさなかった同一県・隣接県の居住者限定という「県民割」の制限を外したはよいが、「クーポンで儲からないようにする」という謎の意図をもって、割引を適用できる旅行代金の下限金額を設定した。
2020年の「Go To トラベル」では旅行代金の約15%のクーポンを付与していた制度を撤廃し、平日は3,000円、休日は1,000円という金額算定根拠不明・用途が限られるクーポンを押し付けるようになった。「Go To トラベル」を2年寝かせた結果としてはあまりにお粗末だと考える。とはいえ、インフルエンサーと呼ばれる人々の煽りの効果もあり、「全国旅行支援」は市民権を得ることができ、多くの観光地がにぎわったのは周知の通りだろう。
ただ、この「全国旅行支援」、宿泊施設にとっては、本人確認・接種状況等確認やクーポンの受渡でオペレーションの効率が悪化。全国への旅行を扱う旅行会社などでは、行先に応じて47ある都道府県ごとにことなる細則に対応することが求められるという、カオスな状況に陥った。
オンライン旅行会社では、それぞれの都道府県ごとに準備ができ次第販売することにしていたが、複雑な制度により検討意欲を失った旅行者がゾンビのごとく流れ込んだため、販売開始時刻にサーバーダウンする旅行サイトが続出。連鎖的に宿泊施設の予約マネジメントを担うシステムもダウンするなど、「支援」のはずなのになぜか「被害」が出る、というこちらもカオスな状況となった。
おまけに、適正な予算配賦が行われず、オンライン旅行サイトを中心に、当初予定より大幅に繰り上げて販売を終了する動きも相次いだ(例:「じゃらんnet、37都道府県の全国旅行支援の宿泊販売終了」。「せっかく旅行しようと思ったのに」という声が沢山聞かれた。「全国旅行支援」なのに旅行が支援されなかったようだ。支援開始前の予約「後付け」も実施されたが、予算の枯渇やサーバーダウンなどの影響で、オンライン旅行サイトでは混乱が広がった。
行動制限の緩和もあって、客数も増加、客単価も上がったであろう旅行業界だが、「全国旅行支援」の”面倒臭さ”に振り回されているのも事実だ。
「Go Toトラベル」を1年半寝かせて劣化した、そんな「全国旅行支援」も、1月10日からは、割引率とクーポン額を低下させてリターンズを展開(「旅行需要喚起策、年明け以降も実施 割引率20%に」)。宿泊施設などが紙を一枚一枚印刷し、利用者のスマホに読み取らせるといった、合理化や省資源化といった流れに挑戦する素敵な「電子クーポン」制度での運用が原則となる。旨味が少なくなった「全国旅行支援」に、利用者も旅行業界も振り回される日々がまた帰ってくる。
「全国旅行支援」2023年の展望
「全国旅行支援」は、2023年も実施されることが決まった(「年明け以降の「全国旅行支援」、1月10日開始」)。ただ、2023年の制度は、政府によって一律の終了時期を定めず、各都道府県に割り当てられた予算が終了次第終了することとなった。つまるところ予算消化、ソフトランディングといったところだ。
「全国旅行支援」を利用したいという場合、極力早めの手配がおすすめだ。旅行業界は、もうしばらく制度に振り回される状況が続きそうで、持ちこたえてほしい。「Go To トラベル」にしろ「全国旅行支援」にしろ、複雑なシステムを作り上げたところで、その仕組みを適切に再利用しようとしない行政の姿勢はもっと批判されるべきではないだろうか。
感染状況の悪化に伴い、極力人々を移動させずに旅行させようとした「県民割」制度を無理やり全国に拡大して、制度を「再利用」するのはまったく適切でないし、利用者も事業者もわかりづらさに振り回されている現状を、もっと行政は見つめるべきだ。
筆者としては、わかりづらい制度だと攻略甲斐があって楽しくなってしまう奇特(危篤)な人間なので、年明けの「全国旅行支援」もしっかり使い倒そうと思う。
国内もインバウンド復活で観光業界復活なるか?
「Go To トラベル」も「全国旅行支援」も、新型コロナウイルスによって冷え込んだ旅行業界の支援に主眼があった。
旅行業界では、ここ2年以上インバウンド(訪日外国人)需要が蒸発。ここ数か月の入国規制緩和で、都市部を中心に、急激に観光する外国人が増えた。2023年は、国内需要を維持しながら、海外からの観光需要を再獲得し、かつ囲い込んでいけるかどうかに観光業界の運命がかかっている。
世界中の国の中から日本を選んでもらい、47都道府県の中から、訪れたくなるような地域を作ることが、各地域の命運を分けるといっても過言ではない。
おわりに
いままで指摘してきたように、観光業界にとっての2023年は、コロナ禍からの再出発・復興の意味合いが大きくなるだろう。一方、足元では感染症や国際情勢などで不安定な状況が続いており、引き続き流動的、変化の多い一年になりそうだ。