ANA、久米島でドローン配送の実証実験 飛行最適化や人件費削減など検証

ANAホールディングスは11月6日から9日まで、沖縄県久米島町にて「レベル4によるドローン配送サービスの実証実験」を実施。11月8日にはその様子が報道関係者に公開された。

今回の実証実験は、レベル4によるドローン配送サービスを行い、飛行の最適化や人件費削減など、技術面・ビジネス面における有用性の検証するために実施。沖縄県久米島町にあるAコープ久米島店から、飛行距離約2.3キロ離れた仲里間切蔵元跡まで注文された商品をドローンで届けるという内容。

Aコープ久米島店

今回の実証実験での流れ

今回の実証実験での流れ

地域住民人はあらかじめ実証実験についての案内がなされており、配布されたチラシにある商品を、Aコープ久米島店に電話で発注。商品を担当者が隣接する駐車場に設置した離陸地点まで運び、専用のボックスに詰めこんでドローンにセットする。

注文の商品を専用のボックスに詰め込む

注文の商品を専用のボックスに詰め込む

地域住民に配布されたチラシ。商品はお惣菜がメイン

地域住民に配布されたチラシ。商品はお惣菜がメイン

使用する機材はACSL式PF2-CAT3型で、サイズは1067.8×1174×600.9ミリで、搭載可能重量は1キロ。運用最高速度は秒速10メートル、最大飛行時間は20分となっており、レベル4での使用に必要な「第一種型形式認証」を取得したモデル。

ACSL式PF2-CAT3型

ACSL式PF2-CAT3型

専用ボックスや梱包材も含めて、ペイロードは1kgまで

専用ボックスや梱包材も含めて、ペイロードは1kgまで

専用ボックスをセットしたドローンは離陸すると、仲里間切蔵元跡まで飛行。一直線ではなく、2箇所で方向を変えるルートとなっているが、これはドローンに搭載されているLTE(NTTドコモ)の電波を受信しやすいルートにしているためだ。

専用ボックスをドローンにセット

専用ボックスをドローンにセット

操縦士のコントロールで自動航行がスタート

操縦士のコントロールで自動航行がスタート

今回の飛行ルート

今回の飛行ルート

仲里間切蔵元跡に着陸したドローンは、自動で専用ボックスを切り離し、再び離陸してAコープ久米島店まで戻っていく。切り離された専用ボックスはボランティアで参加している担当者がピックアップし、依頼者の自宅まで届けるようになっている。

仲里間切蔵元跡への着陸は無人

仲里間切蔵元跡への着陸は無人

そのまま専用ボックスを切り離して、再び離陸していく

そのまま専用ボックスを切り離して、再び離陸していく

切り離された専用ボックスは、ボランティアが注文者の自宅まで運ぶ

切り離された専用ボックスは、ボランティアが注文者の自宅まで運ぶ

今回は有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行が可能なレベル4での運用となるため、ドローンの飛行に関しては、Aコープ久米島店駐車場にのみ人員を配置。レベル3の段階では、飛行ルートがクルマや人が通行する道路の横断や、民家の上を通過する場合は補助者が必要だったが、レベル4では不要に。目的地の仲里間切蔵元跡も飛行のための人員は配置していない。運航に関しては、基本的に「一等無人航空機操縦士」がひとりで行えるシステムになっている。

レベル4での運用に必要な条件

レベル4での運用に必要な条件

運航に関しては、一等無人航空機操縦士ひとりですべてオペレーションしている

運航に関しては、一等無人航空機操縦士ひとりですべてオペレーションしている

事業を担当しているANAホールディングスの津田佳明未来創造室長は「レベル3までの運航だと、どうしてもオペレーションコストがかかってしまう。今回のこのレベル4では、これを画期的に変えることができる。圧倒的に運航コストを下げていくことができ、このコストダウンが事業化につながる大きな鍵だと思っている」と話している。

ANAホールディングスの津田佳明未来創造室長

ANAホールディングスの津田佳明未来創造室長

取材日は風も弱く、マルチコプタータイプのドローンが飛行するには条件が良い状況で、フライトの安全性に関しては特に問題は発生していない。一等無人航空機操縦士を取得し、今回の運航をオペレートしているANAホールディングス未来創造室モビリティ事業創造部ドローン事業グループの青柳優介氏によると、前日はもう少し風があり状況的には厳しかったものの、特にトラブルは発生してないとのこと。人員を大幅に削減したレベル4での運用でも、飛行の安全性はかなり高い状況だ。

ANAホールディングス、未来創造室モビリティ事業創造部ドローン事業グループの青柳優介氏

ANAホールディングス、未来創造室モビリティ事業創造部ドローン事業グループの青柳優介氏

一方で、今回の実証実験でサービスを体験したユーザーからの話では、飛行時の騒音や「もっと重いものを家の前まで運んでほしい」といった指摘もあった。このあたりの問題点、実はマルチコプターのドローンを使った配送の実証実験ではかなり初期から指摘されていることで、マルチコプターの根本的な問題点と言える。

津田氏は「まずは安全に空のオペレーションをしなきゃいけないというところに、確かに優先をしてきた」と話しており、マルチコプターのドローンを使った運航に関しては、現時点でも安全性は高く運用には問題ないと理解できる。

とはいえ、マルチコプタードローンの根本的な問題点を解決しない限り「ドローン配送サービス」の事業化に関してハードルはかなり高い。青柳氏は、こういった問題点について「機体メーカーとの協議は引き続き密に続けていきたい」と説明。今後は安全性に加えて「ドローン配送サービス」に適した機体の開発や運用にも期待したい。