JALグループ、「JALunLunブラックフライデー2024」開催 ホノルル片道14,000マイルなど
世界が「奇跡」と称した羽田事故脱出 JALの安全文化をリスペクトした場所がフランスにあった
羽田空港で日本航空(JAL)のJL516便(エアバスA350-900型機、機体記号:JA13XJ)と海上保安庁機が衝突した事故は、航空業界に衝撃を与えた。残念ながら海保職員5名が命を落としたが、JAL機の乗客367名、乗員12名の計379人が全員脱出できたことについては、国内のみならず海外からも「奇跡」などと驚きの声があがっている。
炎上する機内で乗客が騒然とする中、全員が無事に脱出できた背景に客室乗務員(CA)の的確な判断と冷静な指示があったことは各メディアで報じられている通り。CAが「保安要員」であることを改めて強く認識した人も多いはずだ。
羽田空港第1ターミナルの南側、東京モノレール・新整備場駅前に立つJALのオフィスビルに、「安全啓発センター」と呼ばれる場所がある。
520人の命が失われた1985年8月12日のJL123便墜落事故。JALはこの出来事を風化させてはならないという思いを込め、事故機(ボーイング747-SR100型機、機体記号:JA8119)の残存機体や乗客の遺品を保存した同センターを2006年4月24日に開設。グループの研修施設として、乗客の命を預かる重みを社員一人ひとりに伝え、安全運航を提供するための原点としている。施設内には、見学後の社員が安全に対する思いを記した「安全宣言」も展示されている。
1月2日の事故で乗客・乗員全員の命が助かった裏には、CAや運航乗務員をはじめ、JAL社内全体に脈々と受け継がれた安全文化があったと言えるだろう。
ところ変わって、フランス・トゥールーズにあるエアバスの最終組立工場。JAL向けのA350-1000型機の製造が進むこの工場の敷地内にあるのが、「エアバスセーフティプロモーションセンター」だ。
実はこの施設、JALの安全啓発センターを訪れたエアバス幹部がその内容に感銘を受け、2023年2月28日に設立したもの。入口のパネルには“inspired by Japan Airlines”と明記されている。
“Safety is everyone's business”という標語が掲げられた展示スペースには、これまでにエアバス機で発生した全ての事故事例や、過去の事故が航空システムやオペレーションの改善に活かされてきた歴史を説明するパネルが並ぶ。中央の上映スペースでは、生々しい事故現場や遺族の映像が流れ、航空事故の悲惨さや命の尊さ、安全意識の重要性を訪れた人に訴えかけている。
展示資料によれば、過去にエアバス機で起きた事故によって命を落とした人は3,456人。エアバス製品安全コミュニケーション&危機対応アドバイザーのニコラス・バルドゥー氏は、「この事実を忘れず、安全意識を確立するために、全社員がこの施設を訪れることを強く推奨している」と説明する。
これまでに従業員や関係者など5,000人以上が同センターを訪問しており、今後、ドイツ・ハンブルグやスペイン・ヘタフェなど、フランス以外にある支社や工場にも同様の施設を設ける予定だという。
同氏は「我々は過去の事故から学び、常にそれを改善につなげてきた」と話す。羽田事故の原因は完全究明には至っていない。それでも、この事故の記憶と教訓は、空の安全のさらなる前進に生かされることは間違いないだろう。