谷川岳ロープウェイ、「谷川岳ヨッホ」に名称を変更 12月1日から
急速に発展が進む、サウジアラビアの首都リヤドを訪れた 最先端スマートシティや世界遺産、美食も楽しめる【レポート】
中東の産油国として知られる、サウジアラビア。GDPの4割以上を石油が占める産油国で、輸出先の上位として日本も挙がる。2022年のGDPの実質成長率は8.7%と、中東諸国でも極めて高い発展を遂げている。
人口は約3,200万人で、中東諸国ではイランやイラク、アフガニスタン、イエメンなどに次ぐ規模。投資が活発なイメージがある、アラブ首長国連邦(UAE)の1,009万人、カタールやバーレーンの150万人などと比べると大きく、治安が安定していることから、魅力的な投資先に映るという。日本からの投資も活発だ。日本銀行の国際収支統計によれば、2022年には630億円が投じられ、過去5年間で最大となった。日本企業は110の拠点を置き、約600人の邦人が在留している。
そんなサウジアラビアが、2016年4月に発表した「サウジアラビア 「ビジョン2030」」で、サルマン国王は「私がこの国家で目指す第一の目標は、サウジアラビアをすべての面における”先駆的かつ優れたグローバルモデル”として成功させること」として、改革や開放に舵を取った。脱石油依存として掲げた観光戦略は、コロナ後に大きな拡大を遂げている。2019年9月、日本を含めた49か国・地域の国籍者を対象に、観光ビザの発給を開始。現在は63か国・地域に拡大している。電子申請が可能で、料金は494.21サウジアラビアリヤル(約19,820円)と高額だが、無料の通過・ストップオーバービザでも96時間の滞在ができる。
残念ながら日本との間の直行便はないが、ドーハやドバイ経由でワンストップでアクセスできる。将来的な直行便の開設に向け、2023年12月に両国間の運航の枠組みの拡大に合意しており、2025年の運航開始を目指すリヤドエアが、開設に意欲を示している。
注目を浴びるサウジアラビアに、2023年には過去最高となる1億人の旅行者が訪れた。3月に記念セレモニーが首都リヤドで開かれるにあたり、訪れる機会を得た。
急速な発展が進む、「KAFD」
リヤドに突如現れた金融エリア、「キング・アブドラ・ファイナンシャル・ディストリクト(KAFD)」。160万平方メートルの面積に、最先端のインフラやオフィス、ホテル、レストラン、そして空港との間を結ぶメトロを擁する、スマートシティだ。
政府系ファンドの公共投資基金(PIF)が5,000万米ドルを投資して進めるプロジェクトの一つで、5つのエリアから構成されている。各エリアは「スカイライン」と呼ばれるトンネルで接続されている。中でも高さ385メートルの「PIFタワー」や304メートルの「KAFDワールド・トレード・センター」は圧巻。世界的ブランドのホテルも誘致しており、2027年には「リージェント・リヤド・KAFD」と「インターコンチネンタル・リヤド・KAFD」も開業する。
リヤドメトロは年内にも開業を見込む。KAFD駅はザハ・ハディド・アーキテクツが設計した美しいデザインが特徴的で、わずか15分でリヤド国際空港にアクセスできる利便性の高さも売りのひとつ。朝夕には渋滞が目立ち、混雑緩和にも寄与するとみている。
開発中の現在は、季節によって異なるものの、2万人の労働者が開発にあたる。完成後には5万人以上が居住することになるといい、公園やスポーツ施設、モスク、学校も設けられ、最終的には61本のタワーを含む建物が建設されて、一大スマートシティになる。世界の大企業や投資家のハブとなることを目指しており、2月には投資家向けの特別査証を導入したという。
歴史地区「ディルイーヤ」で美食を
歴史地区「Diriyah(ディルイーヤ)」に位置する「ブジャイリ テラス」は、世界的に有名なレストランが20軒以上軒を連ねる美食地区。ディルイーヤもPIFが出資するギガプロジェクトの一つで、ユネスコ世界遺産であるアットトゥライフに隣接している。リヤド北西部に位置し、土作りの歴史的建造物とサウジアラビアの歴史に触れることができる。
アットトゥライフは、土作りの歴史的建造物や文化を遺した世界遺産で、昼と夜で違った顔を見せる。内部は博物館になっており、18世紀後半以降の工芸品や武器、書籍などを展示している。
アットトゥライフの脇には、トマトやミントが植えられていた。これも国家プロジェクトの一つで、2030年までに100万本の木を植えることを目指しているという。生育には再生水を使用、環境にも配慮している。
現地のコーヒーチェーン「Camel Step」が人気、街中には日本食も
伺ったのは3月前半で、中東としては比較的過ごしやすい時期であるものの、昼は30度近い。加えて乾燥しているため、適度に休憩しながら観光を楽しむのがいい。観光シーズンは10〜2月、夏は平均35度を超える。
自家用車での移動が中心で、公共交通機関はバスが一般的のよう。運賃は3日間で20サウジアラビア・リヤル(約820円)などとリースナブルだが、観光で動くにはハードルが高く、Uberなどの配車アプリの利用を勧めたい。建設中のメトロが開通すれば、より動きやすくなる。街にはあちこちに駅を示す看板があった。
ショッピングモールでは、高級ブランド品の比率が極端に大きいように感じた。そんなモールにあるフードコートは、質の高い食が集まっている。
進化し過ぎているようにも感じる豪勢な巻きずしのほか、アンガス牛にアメリカンチーズや玉ねぎがのった「しゃぶしゃぶ」という名の料理はともかく、各国料理がきちんとしたレストランで食べるのに比べればリーズナブルに楽しめる。もちろん、マクドナルドやケンタッキー、サブウェイといったお馴染みのチェーン店も進出していて、こちらは庶民的な価格。
サウジアラビアの地場コーヒーチェーン「Camel Step」は人気チェーンで、ひっきりなしに現地の人が訪れていた。アイスドリップが780円、カフェラテが940円と日本の物価を考えるとちょっと高めに感じたが、人気があるのもうなずけるこだわり。豆やタンブラーなども販売している。
デーツやオリーブオイルといったサウジアラビア産の商品には「SAUDI MADE」のロゴが描かれているので、おみやげ探しの目印にしたい。空港の免税店ではSIAFA製のデーツやコーヒーが置かれていて、ほぼ定価(もしくは割引価格)で売られていたので、安心して購入できる。その他にはTシャツや帽子、置物程度でラインナップはそう多くない。スーパーマーケットは輸入品が中心だったが、日本製の食品などはあまり見受けられなかった一方、韓国製のラーメンなどが多い印象を受けた。
宿泊していたのは、フォーシーズンズホテル リヤド・アット・キングダムセンターで、リヤドの中でも最も高級なホテルの一つ。オフィスやショッピングモール、レジデンス、展望台を備えた栓抜き型の複合施設、キングダムセンターの上層階に位置し、充実した滞在にはぴったり。外資系チェーンホテルの進出も増えており、観光客の増加とともに、選択肢がより豊富になるだろう。
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現地のガイドによると、日本からサウジアラビアを訪れる観光客は多くても1日二桁にとどまるという。円安や燃油高という逆風のみならず、直行便がないことも大きな理由だろう。
一方、エイチ・アイ・エス(HIS)がリヤドに支店を開設したほか、旅行ガイドブック「ことりっぷ」もサウジアラビア版を発売するなど、機運は高まる。ジェッダには「チームラボボーダレス」、リヤド近郊にはドラゴンボールのテーマパークもオープンする。
日本から直行便が開設されれば約12時間で結ばれることになり、歴史と最新技術を体感でき、様々なイベントも開催されるリヤドを中心に、サウジアラビアを訪れる人は確実に増える。次はジェッダやメディナを訪れたい、という希望を持って、ドバイ経由で帰路に就いた。(取材協力:サウジアラビア観光省)