貨物急増で北米の港湾の混乱続く、航空貨物に恩恵 LALBは貨物や船が滞留

北米での貨物の滞留が続いている。アジア航路の北米の玄関口である、ロサンゼルス港と隣接するロングビーチ港(LALB)では、未処理のコンテナや貨物の積み下ろしを行う貨物船が多く見受けられた。

貨物船の接岸後、貨物は数日かけて船から下ろされ、トレーラーや鉄道に積替えられた後に全米へ運ばれる。トラックやシャーシ不足によってコンテナの引取に遅延が発生しており、積荷を下ろす貨物船が港の沖合で列をなしている。

オーシャン・ネットワーク・エキスプレスによると、7月16日現在でLALBで16隻、オークランドで19隻の貨物船が沖合で待機中。LALBでは鉄道への接続に15〜25日を要している。

運賃の高騰は、海運会社に大きな利益をもたらしている。オーシャン・ネットワーク・エキスプレスの4月〜6月期の税引後利益は23億9,200万米ドルとなり、前年同期比14.3倍と大きく拡大した。世界の荷動きは前年同期比2割増で、各航路満載の状況が続いている。積み荷スペースに対する船積み実績の割合を示す消席率は、北米・欧州行きともに100%となっている。

ANA Cargo(ボーイング777F)

こういった状況下で、アジアから北米の航空貨物の需要も急増している。ANA Cargoが東京/成田〜シカゴ線に投入し、週5便を運航している貨物専用機のボーイング777Fは、旺盛な需要を反映し、8月には週1便を臨時便として追加運航している。バンコクやシンガポール、台北/桃園、ソウル/仁川、香港には貨物機、シカゴやロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク/ジョン・F・ケネディ、ヒューストン、シアトルなどには旅客機の貨物専用便で臨時便を運航し、アジアと北米間の貨物需要の取り込みを図っている。

新型コロナウイルスの感染拡大初期には医療物資などが多く運ばれたものの、2020年秋頃からは自動車部品や半導体などが輸送物品の中心になっており、運賃も高騰している。一方で、輸送できる量はボーイング777Fでも、貨物船に積み込まれる大きいコンテナである20トンコンテナ2個分にすぎないという。

野村総合研究所によると、中国で自動車部品などの生産がV字回復したことや、アメリカでの巣ごもり需要の増加、LALBでの作業員不足、欧米での空コンテナの滞留による不足と新造コンテナの生産量急減が背景にあるという。2022年には港湾作業員のストライキも見込まれていることから、状況が解消する目処は立っていない。