ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、ラブホテルまで評論する、ホテラーズ編集長にして気鋭のホテル評論家瀧澤信秋氏が語る。
「ラブホテル」という表現は法律上ない。
『ホテル』と名のつく施設はさまざま。外資系ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、カプセルホテルなど、「宿泊できる施設=ホテル」ともいえそうだが、宿泊ではなく数時間の休憩利用に主眼の置かれた、いわゆる『ラブホテル』という業態もある。これは男女2名での異性同伴利用が想定された施設といえるが、実はラブホテルの法令上の定義は細かく決められている。
例えば、旅館業法上ではホテル営業や旅館営業に該当することになるほか、風俗営業法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)上の規制や各自治体による条例などでもその定義は細かく定められている。さらに、実態はラブホテルであるものの、ホテル営業や旅館営業としてのみ届け出された施設などもあり、詳述は避けるがその実態は多様化しているのが現状だ。
「休憩料金16,000円のすごいラブホ!? これはもはや『高級リゾートホテル』だ!」(著:瀧澤信秋)
休憩利用も主眼に置かれた施設で、宿泊利用のチェックイン時刻は夜半以降に設定されている施設が「ラブホテル」の特徴でもあるが、本来想定されている男女2名利用はもとより、昨今女子会をはじめとしてパーティーなどにも利用される傾向もあり、「レジャーホテル」という表現が業界では一般的だ。
筆者はホテル評論家としてレジャーホテルの業界誌へ連載を持っており、詳しくリサーチや取材などする機会も多い。特に2014年は、
365日365ホテルというミッションを遂行中で、レジャーホテルのの利用もありそれらのレポートも発信している。
当該業態は、日中の休憩利用と夜間の宿泊利用が想定されており、1客室1日3回転から4回転という日もある。確かに人気施設へ取材に出向くも、平日の日中から満室というシーンも多く、その需要の高さに驚かされる。
レジャーホテルを紹介する専門サイトもあるが紹介に留まり、一般ホテルを対象とした「予約サイト」というような要素はない。レジャーホテルは、予約なしで直接出向きチェックインする「ウォークイン」の利用、言い換えれば「突発的利用」がその特徴でもあることが伺える。
そのような中でも人気を博する一部施設では、豪華で人気のある特定客室へ予約の「電話」が入ることもあるという。しかし、運営者からすると予約を受けるリスクがある。例えばチェックイン予定の6時間前に予約があった場合、6時間のうちに更に1回転できる可能性があるのだ。6時間以内にチェックアウトしてもらえればいいが、もし延長利用された場合にはダブルブッキングという状態になる。
人的サービスがほとんどない業態につき、そのシーンに応じた細かな対応をするのは難しい。かようなことから、そもそも予約という概念はないが、稀に常連からそのような予約が入った場合には、常連という「特別枠」で予約の時点から料金が発生する取り扱いをしているというのだ。客室の保証料金ともいえる。
そのような業態ゆえ、見知らぬ一見ゲストからの予約という発想はないし、更にはキャンセルという概念もない。
流動的な利用がなされるレジャーホテルに「予約」は相容れないのだ。
文:瀧澤信秋/ホテル評論家・Hotelers編集長