筆者はホテル評論家として全国各地のホテルへ取材に出向くことが多い。ビジネスホテルのような寝るためのホテルもあるが、シティホテルの多彩なレストランへ出向く時の華やかな気分は最高だ。全国主要都市のフラッグシップといえるホテルにあるレストランは、舌の肥えた地元グルメ達を楽しませているが、旅行者であっても旅先のホテルグルメには心躍らされるものだ。
九州の大都市、福岡のかようなホテルのひとつに「グランドハイアット福岡」がある。キャナルシティ複合施設内にあるラグジュアリーホテル。ホテル内には和洋中様々なレストランを備えるが、イチオシは広東料理の「チャイナ」である。
同店の料理長、袁國星(こうえんせい)氏は2013年6月に就任。九州の海鮮食材に惚れ込んで福岡へ来たというだけあり、選び抜かれた素材が袁料理長の腕により五感を楽しませる中華の一皿へ変貌を遂げていく。同店の数ある海鮮料理の中で、今回は「海老の揚げ物 マンゴーマヨネーズソース」を紹介しよう。
エビチリ(海老のチリソース和え)は中華の人気メニューとして有名であるが、通称「エビマヨ」といわれるエビをマヨネーズで和えたメニューにもファンは多い。いずれも主役である海老の素材が料理の格を決定付けるともいえそうだが、袁料理長の腕にかかると、少しだけカリカリっとした食感の直後に襲われるプリプリ感、見た目も歯ごたえも存在感抜群の素材である海老は、マンゴーの香り高きマヨネーズソースで身をまとう。
もともとエビマヨは女性に人気のメニューだ。更に「マンゴー」とくれば女性のハートを鷲掴みといったところか。確かに、マンゴーのリキュールやペーストで香りを、角切りにされたフレッシュなマンゴーで食感を演出という贅沢なソースである。フィリピン産の少し酸味の強いマンゴーを用い、食した時のサッパリ感まで計算されているのだ。とはいえ、この海老の存在感は、男性でも大満足の一皿になること請け合い、ランチコースでもお手軽にこのメニューを楽しめるが、その海老は半分のサイズというから、満足感という点からいえばやはりアラカルトで楽しみたいメニューである。
袁料理長のオリジナルレシピは、今日も福岡の食通達をうならせる。
(文:瀧澤信秋/ホテル評論家・Hotelers編集長)