「つながる世界は無限大」 JALスカイワイファイ担当者インタビュー

-開発はどういった点が苦労しましたか?

 (藤山氏)すべてにおいて苦労の連続でした笑。今となっては笑い話ですが、サービス面や機体改修などの技術面など、全部です。

JAL,スカイワイファイ

通信衛星からの電波を受信するアンテナは機体中央上部に装備されている © Toshio Tajiri/Flight Liner=14年5月

 国内線のJAL SKY Wi-FiのシステムはアメリカのGogo社のサービスを使っています。Gogo社との連絡手段はほどんどがメールか電話でした。細かい話は実際に会って話合う必要があるので、何度もミーティングを行いました。我々がお客さまにご提供したいサービスの水準を理解して貰うのに一番苦労したという記憶があります。

 (末崎氏)藤山が申し上げた様に、我々とGogo社の考え方に当初は異なる点はありました。JALとしてお客さまにご提供出来る水準までサービスを上げていきたい思いがある一方、Gogo社にはGogo社のサービス水準があります。

 日本人のお客さまへのサービスを主体としているJALが求める繊細さと海外メーカーの方の感覚に、時として差があることは事実です。ただ、我々はお客様が「JALに乗って良かった」と思えるようなサービスを提供したいので、この差をなくすために対話にかなりの時間を費やしました。

 密な話し合いができたおかげで、最終的に我々が求めるサービス水準をご理解いただき、JALとGogo社が一つのチームとなってこのJAL SKY Wi-Fiというサービスを始めることができました。
 
-アンテナ取り付け等の改修作業は?

JAL,機体改修

機体上部に整備士がアンテナを取り付ける改修作業。通信が途切れないためにも細かい作業が求められる(資料提供:JAL)

 (藤山氏)技術的な部分では、飛行機の上部に衛星の電波をキャッチするアンテナと「レドーム」と呼ばれるドーム型の覆いを取り付ける改修作業が必要です。

 機種によって改修日数は前後しますが、ボーイング777型機の場合で座席の入れ替えとアンテナの設置をあわせて概ね20日必要です。

 アンテナの設置作業は弊社の整備部門が苦労をしながら行った作業の一つでもあります。飛行機の構造部分に関係する改修なので、絶対の安全性が求められます。

 また、サービス開始後にアンテナが故障をしたらどう修理するのか、整備部門はどう対処すべきかなど、Gogo社の専門スタッフと密接にやりとりしてすべてを確認したうえでアンテナの取り付けに着手しました。

 家庭に設置するBSのアンテナで緻密な角度が求められるのと同じように、飛行機のアンテナも衛星の電波に対してピンポイントの角度が求められます。少しでもはずれると感度が落ちて電波を受信しなくなります。

 上昇と下降をし、右にも左にも動く飛行機のアンテナが衛星に対して的確な角度を維持するには高度な技術が必要で、整備部門も当初はかなり苦労していたようです。ただし、Gogo社の協力と整備部門の努力のおかげでサービス導入後、これまで大きなトラブルは起きていません。
 
-これまでの苦労と新しいチャレンジを振り返って、いかがでしたでしょうか?

 (藤山氏)JALは他社に先駆け、既に国際線でもJAL SKY Wi-Fiを導入していますので、「つながることが当たり前」という安定的な機内接続環境をご提供し続ける必要があります。サービスというものは日進月歩ですので、これからもお客さまにとって使い易い、より良いサービスを目指して改善につなげていく日々です。
 
-機内Wi-Fiを導入する航空会社が増える中、今後はどういった点で差別化を図りますか?

JALスカイネクスト,スカイワイファイ

SKY Wi-Fiが搭載されている国内線新仕様機材「JALスカイネクスト」機内 © Toshio Tajiri/Flight Liner=14年5月

 (藤山氏)やはりお客様にご満足いただける通信品質を維持することです。機内Wi-Fiの前提は繋がること、途切れないこと、そして一定以上の速度を保つこと。

 また、我々は大型機から小型機まで国内線に使用する77機の飛行機全てでWi-Fi環境をご提供する予定です。大都市間を結ぶ路線だけではなく、地方と地方を結ぶ路線でもWi-Fi環境をご提供するのは、他社様との差別化にもつながると思います。衛星通信技術というものは非常に難しい面が多々ありますが、快適な接続環境でJAL SKY Wi-Fiをご提供していきたいと考えています。

 「JALに乗ったらつながる」というのは当たり前と思って頂き、それ以外にも今後は様々な付加価値をご提供していきたいですね。

 つながる世界は無限大。夢は膨らむばかりです。
 

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