不慣れな人には厄介モノの「サマータイム」、交通機関の発着時間はどのように変わるの?【さかいもとみの旅力養成講座】

デジタル機器はどう動く?

では、スマホやパソコンは夏時間について、どのように対応しているのでしょうか。結論から言うと話は簡単で「勝手にその時間になると機械が補正する」ようになっています。

例えば、欧州で夏時間に変更される正式なタイミングは、「UTC(協定世界時)の午前1時」と定められています。その時間にスマホを眺めていると、0時59分59秒の後、1時になるはずの短針がいきなりグイーンと2時まで飛びます(イギリスの場合)。

参考までに、欧州圏内各国間の時差は常に同じで、例えば英国と欧州大陸(中央ヨーロッパ時間)との間には、常に1時間の時差があります。ただし、夏時間をやっていない日本との時差はそれぞれ1時間ずつ短くなります。

例えばイギリス・ポルトガルでは平常時の時差は9時間ですが、夏時間施行時は8時間、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどの欧州主要国では平常時の時差は8時間ですが、夏時間施行時は7時間となります。

どんな形で運用されるのか?

列車は夏時間施行の有無にかかわらず時刻表の表示に沿って運転される(筆者撮影)

では、国をまたがって飛ぶ飛行機はどのように時間を調整しているのでしょうか?

実は、世界の航空ダイヤは「欧州の夏時間の変更日と同じタイミング」で切り替わります。つまり、夏ダイヤは夏時間の施行中、冬ダイヤはそれ以外の間にそれぞれ使われます。ですから、夏時間の補正プラス季節で変化する飛行時間の調整などが全部加味された状態でスケジュールが発表されることとなっています。

したがって利用客は、夏時間の施行の有無にかかわらず、券面やスケジュール表に記載されている時刻に合わせて、今いる自分の場所で使われている時間を使って行動すれば良いというわけです。

ちなみに、夏時間変更当日の寝台列車や夜行バス、一部のフライトは普段のスケジュールより見かけ上1時間延着します(時計だけ1時間先に進んでいるため)。そういったタイミングに交通機関を乗り継ぐ人は細かい計算が必要になるかもしれません。

「寝坊」は回避できる?

ロンドン・ヒースロー空港の出発案内板。夏時間の調整は全て終わった形で表示される(筆者撮影)

これまで述べたように夏時間への対応は、「変更前日の夜に時計を1時間進める」というものですが、怖いのは「進めるのを忘れて寝坊する」というトラブルとなります。

普段からスマホを目覚まし時計代わりに使っている人は、時計が変わるのと同時にアラーム機能も補正されますから、本来の起きたい時間に目覚ましが鳴り、寝坊は生じないでしょう(「なんとなく睡眠時間が足らないかなぁ」と気がつかないまま動き出す人もいるでしょうが……)。しかし、腕時計や目覚まし時計を使って旅する人は注意が必要です。

慣れない夏時間の仕組みと対応について、概ね理解できましたか?くれぐれも乗り物の出発時刻やツアーの集合時間に遅れない人が出ないことを祈るばかりです。

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