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エコロジーを追求した未来の鉄道、速度競争は終焉【さかいもとみの旅力養成講座】
旅に出るとき、どんな乗り物を使って目的地に向かいますか?クルマ、飛行機、それとも電車?いろいろなチョイスがありますね。
それぞれの乗り物の業界団体は、世界のあちこちで大きな展示会を催しています。モーターショーやエアショーは割とその存在が知られていますが、実は最新鋭の鉄道車両を集めた展示会、というのもあるのです。今回は世界最大の鉄道見本市についてご紹介しましょう。
2年に1回、偶数年の秋にドイツの首都・ベルリンでイノトランス(InnoTrans)と呼ばれる見本市が開催されます。このイベントがスゴイのは、各メーカーがお披露目したい電車や機関車、貨車などの鉄道車両を会場に運び入れて展示します。現物を業界関係者に直接見せて商談に持ち込むほか、出展会社数3,000社、参観者が4日間の会期中13万人、という数字からもそのスケールの大きさがわかります。
業者向けのイベント日には、さらに車両に使われる部品だけでなく、列車を安全に走らせるための運行システム、保線用の機材、ホームや線路に取り付ける備品など、鉄道に関わるありとあらゆるモノが展示されました。
速度競争はもう打ち止め
技術を競うメーカー各社が大挙してベルリンへと最新の製品を持ち込むわけですから、イノトランスでは「きっとメチャクチャ速い特急列車が見られるに違いない」と思う人も多いでしょう。たしかに2014年の展示会では、一般乗客を乗せて最高時速400キロで走れる怪物車両・イタリア製「フレッチャロッサETR1000」が登場。会場を訪れた人々の注目を一気に集めました。
ところが、前回(2016年)には「そろそろ速度競争は止めにしない?」という流れが顕著となり、そして今回は「最重視すべきはエコ」というポイントに一気にかじを切りました。
開会式では、「鉄道車両メーカーのビッグ3」と呼ばれる独シーメンス、仏アルストム、カナダのボンバルディアの事業トップが仲良く登壇。「これからの鉄道は、やみくもに速さを狙うのではなくエコロジーを追求しよう!」と参列者に改めて呼びかけました。
今回の展示車両を眺めてみると、そのトレンドがよくわかります。エコ追求のための消費電力の削減と車両の軽量化はもとより、バリアフリー対策でフラットな床の導入、そして大量輸送と着席率の増加を実現するために車両の二階建て化、駅から目的地までの「ラスト1マイル(1.6キロ)」を補完するための自転車輸送への対応といったチェックポイントを網羅することが「欧州の鉄道車両のデフォルトスペック」となってきています。そして、車両が廃車となった時のリサイクル率の向上についても各社が競ってアピールしていたのも印象的でした。
こんな傾向について、会場に展示ブースを出した日系商社のスタッフは「世界のトレンドは、費用対効果の最適化に向けた情報技術(IT)の活用とそこへ向けたイノベーション製品の展開にあるようだ」と話していました。