エアバスの最新鋭機、A350の最終組立工場を見学 JAL3号機の姿も

現地時間6月12日に、JALに引き渡されたエアバスの最新鋭機、A350。その最終組み立てを担うのが、フランス・トゥールーズに位置する最終組立工場だ。

広さは78,000平方メートルで、A350に関わる2,000人の社員のうち、約400人がここで働く。9時間勤務が2チームの交代制、昼に30分だけ引き継ぎの時間があるという。2012年に完成したこの工場の屋根にはソーラーパネルも設置しており、使われるおよそ半分の電力を供給するなど、環境にも配慮した。

エアバス最終組立工場(輸送工程)

A350の胴体や翼は、ヨーロッパ各地の11ヶ所の工場で製造されている。主翼はイギリスのブレーメンとブロートン、水平尾翼はスペインのヘタフェ、胴体はハンブルクとサン=ナゼール、エンジンパイロンはサン=テロワからそれぞれ大型輸送機のベルーガ5機で輸送される。1機の製造に7回の輸送が必要で、開発中のさらに大型の輸送機「ベルーガXL」が使用されれば、主翼が2枚搭載できることから6回の輸送で済むようになるという。1機の組み立てには19日間を要し、月に10機ペースで組み立てが進む。

ベルーガXL

組み立ては、「ステーション59(セクション準備)」と呼ばれる工程から開始し、機体を各所に移動しながら組み立てを進める。「ステーション59」では、ベルーガから降ろされた部品に、パネルや保護剤を付けるほか、結合に邪魔にならない範囲でクルーレストやラバトリーを取り付ける。3機が同時作業できるスペースを設けている。「ステーション50(胴体結合)」では、3つに分かれている胴体を結合し、仮主脚を取り付ける。3機が同時作業できるスペースを設けている。

エアバス最終組立工場(ステーション59・50)

「ステーション59」、「ステーション50」、「ステーション40(翼と客室の胴体結合)」、「ステーション30(機体システムのテスト、客室組み立て)」はA350のみの専用設備で、その後はA330との共用設備を使用する。

エアバス最終組立工場(ステーション40)

「ステーション40」では9日間かけて、主翼と水平尾翼、垂直尾翼を接合する。主脚やエンジンパイロンのほか、移動に支障ないものを取り付け、機体の電源を入れる。「ステーション30」で、屋内での地上試験や客室の組み立てを実施した後、エアバスのパイロットがテストフライトを実施する。基本的にフライトは6時間で、クライアントの要望によって長くなることもあるという。

エアバス最終組立工場(ステーション20)

「ステーション18(屋外地上試験)」、「ステーション20(コックピット、エンジン、APUの取り付け)」、塗装、「ステーション15(最終飛行試験)」、引き渡しという順に進む。塗装に使う塗料は1200リットル相当で、塗装面積は2,100平方メートルに及ぶ。

エアバスA350型機は、70%を最新の素材を活用して設計した。53%炭素繊維、チタンとアルミニウムの合金を使用することで、より軽量でメンテナンスコストを抑えた機体に仕上げた。幅広い座席や高い天井、様々な色合いに設定できる照明のほか、客室内の気圧を高度6,000フィート(1,800メートル)相当に保ち、空気は2分から3分で交換するなど、機内環境を快適にする工夫も施している。9月の日本国内線への就航が楽しみな機体だ。