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驚愕の「トルクメニスタン200ドル激安ツアー」 謎に満ちた2泊3日弾丸ツアーの全貌(前編)
なぜ200ドルのチャーター便が実現したのか?
そのトルクメニスタンのベルディムハメドフ大統領は親日家らしい。アシガバード郊外で世界初の天然ガスをガソリンにする大型プラントが川崎重工の主導で進められてきた。その完成式典が6月28日に行われる。プラントの総額は1,500億円という大型プロジェクトであるが、こうしたプロジェクトも大統領の鶴の一声で決まる。今回のトルクメニスタンのチャーターフライトは、
(1)トルクメニスタンから日本へ政府要人や旅行会社関係者を送り、東京プリンスホテルでトルクメニスタン旅行のプロモーションを行うとともに、ツアー客を日本に送る。
(2)このフライトの利用者が東京に滞在している間に日本からトルクメニスタンを往復し、式典に参加する政治家や企業関係者、メディア関係者を運ぶ。
というのが主目的だったようだ。(2)の人数は100名強で、チャーターに使用するボーイング777-200LRでは、かなり席数が余る。そこで
(3)格安料金でツアーをつのり、トルクメニスタンへ観光客を送り込み、同国の観光振興に結びつける
といった事情があったようだ。このツアーが企画されたのは、確認できる範囲では、トライシーに掲載される1週間ほど前で、トライシー掲載後に急激に参加者が増え、最終的には80人以上の旅行者が集まった。200ドルというのはもちろん採算度外視だが、このツーリストがいようがいまいが、飛行機は飛ばすわけだから、そもそも損はしないという見方もできるわけだ。
日曜も休日返上で働く大使館員
結局、申し込み手続きが完了したのは出発2週間前だった。当初は大使館と現地の旅行会社の両方に連絡していたが、大使館員いわく「これからはすべてこちらで管理する」との一言で一本化される。ビザ業務だけでなく、航空券の手配も大使館で行うのだから前代未聞である。しかもこれらのやりとりの多くは電話である。書類に不備があって、日曜の午後、大使館員から携帯電話に電話が入った。大使館員が日曜にも働いているのか。
ちなみに大使館からの連絡は日本語ができる男性1人がすべてを受け持っているらしい。電話をかけるたびに疲れた声になっていったので心配になるがどうすることもできない。
全員の生年月日やパスポート番号がダダ漏れのインビテーション
出発4日前にメールでインビテーションが届いた。このメールにまたもや驚かされた。
我々は9名で申し込みをしていたのだが、添付されたPDFには、旅行会社に登録された44名分のフルネームのほかに誕生日とパスポート番号が記入されていたのだ…。日本の感覚では個人情報の観点からありえないのだが、送られてしまったものは仕方がない。また、大使館員は旅行会社のようなプロではなく、一人で背負い休日返上で働いていることも知っているので責める気も失せてしまう。
そして、当日は朝6時30分に集合という連絡がメールで来た。10時出発のフライトなのになぜ3時間30分前なのか。もっと遅くできないだろうかと思い大使館に電話する。とにかく何か分からないことがある度に大使館に電話をするしかない。すると、大使館員の男性の声は例の疲れた声で「そのほうが安心だと思うからです」。いや、安心かもしれないが、こちとらそんなに早く空港に行っても…と思い、「では8時過ぎくらいに行きます」と答えると、次に大使館員から参加者全員に来たメールの文面にこうあった。「時間があるからといって220名も同時に8時過ぎから来ますと、チェックインに間に合わない可能性があります。」
全席自由席のトルクメニスタン航空
その脅し?を真に受けるほどウブではないので当日8時過ぎに行くと、羽田空港国際線ターミナル1階にあるSカウンター(チャーター便や訓練などで利用するらしい)はガラガラだった。そこでまた衝撃を受ける。”座席はすべて自由席”であるという。
いつもなら最後に搭乗しているのだが、自由席ともなればそうもいかない。出発1時間前にはSKY LOUNGE ANNEXを出て136番ゲートに向かった。空港の電光掲示板にトルクメニスタン航空の表示はない。ゲートの地上職員に確認すると「手書きのボードみたいなものならご用意はできるのですが…」とのことだ。まるでシークレットフライトである。
ゲートからバスで移動すると、沖止めのトルクメニスタン航空のボーイング777-200LRが姿を現した。LRはロングレンジの略。最大航続距離は15,843キロと超長距離を飛べるタイプなのだが、世界中で60機程度しか存在していない。そのうちの3機がトルクメニスタン航空の所有で、6月のパリエアショーでもう1機購入することが明らかとなった。
トルクメニスタン航空、ボーイング777-200LR型機を1機発注
https://www.traicy.com/20190625-T5772
この機材、現在は北京線やイスタンブール線に投入されているが、航続距離の観点からは宝の持ち腐れという気がしなくもない。将来、超長距離線の運航を視野に入れているのだろうか。
JALの新・間隔エコノミーよりもゆとりのある機内
タラップを上がると三角形の小さな揚げ物を載せたお盆を持った客室乗務員が待ち構えていた。揚げ物はトルクメニスタンで人を歓待するときに出すピシメとよばれるものらしい。この後、あらゆる局面でピシメに遭遇することになる。
ブルーを基調としたシートは落ち着いた雰囲気であり、ビジネスクラスは2-3-2の配列で4列の計28席。エコノミークラスは3-3-3の配列で計261席。合計289席だった。乗客は計218名なので、搭乗率は約75%だったことになる。
エコノミークラスのシートピッチは不明だが、シートピッチにゆとりがあることで知られる、日本航空(JAL)のボーイング777-300ER(W63/W64)でも2番目のドア以降に配置されるエコノミークラスが286席あることを考慮すると、かなりゆったりとしているといえる。
全席にパーソナルモニターと電源が備わっていた。若干の音楽プログラム、「トムアンドジェリー」などのショートプログラム、ゲーム、3Dマップは利用できたが、映画はプログラムがなかった。また、ヘッドフォンは配布されなかった(復路は配布があった)が、全席にポーチ入りのアメニティグッズは配布された。
そして、全席のポケットに日本語の機内食メニューが入っている。手作り感満載ではあるが、このわずか1便のためにメニューを作ったのだから敬意を表さなければならないだろう。