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驚愕の「トルクメニスタン200ドル激安ツアー」 謎に満ちた2泊3日弾丸ツアーの全貌(後編)
すべての車が「白い」理由とは?
アシガバートの人口は公称約100万人。この国の2割近くがこの都市に住んでいる。空港を出て最初に気づくのが車の色。白白白白、とにかくすべての車が白である。2018年に入り、アシガバートで「黒い(暗い色の)車」の使用が禁じられたのだが、どうもその黒が拡大解釈されたらしい。理由は「大統領は白が好き」というこれ以上ないほどシンプルなもの。大使館の車といえば黒が定番だが、アシガバートに駐在する日本大使の専用車すら白らしい。
白は車だけではない。アシガバートの新市街に沿道に立ち並ぶ店舗や集合住宅、それらはすべてが白い。しかもただ白く塗ってあるのではなく、多くが真っ白な大理石で出来ている。最初はトルコやギリシャから輸入していたが、あまりにも輸入しすぎて底をつき、中国や台湾、南米のチリからも輸入するようになったらしい。さらに天然大理石では追いつかないので人工大理石にまで頼っているとか。建設会社が必要な量の大理石を用意できないと、建設の許可がもらえないらしい。
浮世離れした大理石のリアル「シムシティ」
ここまで白い大理石で徹底している理由は「大統領は白が好き」だそうで…。理由はともかく、ひたすら白い大理石で統一された街並みは、現実感を失うまでの均質性を持っている。この都市の街並みを「シムシティのようだ」と評した人がいたが、言い得て妙である。
アシガバートは「白亜の大理石建造物の凝集度の高さ」としてギネスに認定されている。ギネスもなにも素人目にみて、2番手が思いつかないほど圧倒的である。しかも天井の高さが4メートルとやたらに高い。すぐに二言目にはコスト、コストという国では決して見ることのできない「ゆとり」が景観に現れている。
単に大理石の建物が連なっているだけではない。広々とした道路や植え込みは頻繁に掃除されており、塵ひとつ落ちていない。そして信号機や街灯のひとつ一つが金メッキされ、アールヌーボーのようにデザインされている。白・金・そして植え込みなどの緑の3色だけで構成されており、広告などもまったくない。未来都市のようであるのに、かつての社会主義国をも彷彿とさせる。
夕食後、30度台前半まで気温が下がり、少しだけ過ごしやすくなった中、さらに市内観光は続いた。日中は白く輝いていた建物には強いスポットライトが当てられ、さらに美しさを増す。パリやプラハといった伝統的な建築ではなく、新しい建築に頼る街並みとしては世界でも類を見ない美しさなのではないだろうか。そして、その美しさは膨大なお金と手間に支えられているのである。
パトカーが先導して、赤信号でも進むバス
ツアー2日目の朝、我々はコンサートに行くことになっていた。正直憂鬱だった。トルクメニスタン行き弾丸ツアーはすべての行程が事前に決められており、出発の数日前、大使館から、「みなさんをコンサートに招待します。」という連絡が来ていた。ただでさえ中1日しかないのに…。だがあれこれ細かな要望が通る気配もなく、素直に従うしかない。
お偉いさん方が天然ガスプラントで式典に参加している間、我々ツアー組80人ほどはプラント近くでそのコンサートとやらを見学することになるらしい。
ホテルから2台の大型バスを仕立てて会場に向かう。我々のバスをパトカーが先導した。すると、このパトカー、警告灯を回しながら、赤信号でもかまわずズンズン進んでいく。そして、交差点ごとに警官が立ち、側面から来る車をすべてストップさせている。
これがウワサに聞くVIP扱いというヤツか。沿道は警官が一定の間隔で監視している。文革の頃、毛沢東が乗る列車を警備する警官が、内蒙古でも走行する2週間前から50メートル間隔で並んでいた(どの日に列車が通るかをカモフラージュするため)らしいが、それを彷彿とさせる。今日の式典にはベルディムハメドフ大統領も来るのだろう。
30分ほど北上したところでバスが速度を緩めた。地平線の果てまで続く平らな砂漠のなかにざっと500人は下らない人たちが待ち構えていた。これが「コンサート会場」だったのだ。
トルクメニスタン式「リアル絵巻物」にアイス食べ放題
細長く延びる会場は、セクションごとに催しがあった。赤い絨毯の上で伝統的な衣装を身に纏い、踊りを披露する人々、隣では畑からメロンを収穫しているパフォーマンス(トルクメニスタンにはメロンの日がある。これは初代大統領であり、独裁者として知られたニヤゾフ大統領の鶴の一声により制定されたものだ)、そして一番端にはトルクメニスタン原産で黄金色に輝く馬、アハルテケに騎乗した隊列だった。強い太陽光を反射した馬体は汗をかき、文字通り輝いている。さらにラクダへ乗る体験、結婚式のパフォーマンスと続いた。トルクメニスタン式の相撲では、ツアー参加者の日本人の若者が参戦し、ガチ勝負を挑んでいた。
催し物は伝統的なものだけではない。なぜか砂漠の真ん中なのにアイスクリームが山ほど入った冷蔵庫があり、すべて食べ放題。夢のようなもてなしだが、現実は2個が限界である。
我々のスケジュールは分刻みで管理されており、数分ごとに隣のセクションのパフォーマンスが始まる。その様子は「リアル絵巻物」だった。
この日の夜、テレビをつけると同じような催し物がほかにいくつも行われていた。彼らはこうした伝統的な祭りを頻繁に行っているのだろうか。道理で隙がないわけである。