1つ星の宿にも歴史あり? “ほぼ最低評価の宿”に泊まりに行ってみた【レポート】

その宿は、JR御殿場線の裾野駅から伸びる通りから小道に入って徒歩5分ほどのところにあった。

玄関はピロティ形式の建物の一階にあり、隣には建て増しと思われる別棟が並ぶ。外観からはそれなりの年季を感じる。R社のサイトによれば「創業八十余年」とのことである。

中に足を踏み入れると、宿の主人と思しき男性がロビーの椅子に座っていた。名前を告げると、「お待ちしていました」と立ち上がり、宿の案内をしてくれた。事前に電話したときにも感じたが、話好きの好々爺のようだ。

案内によれば、筆者の部屋は2階。隣の部屋には連泊客がいるとのこと。夕食は1階の部屋で、19時頃に用意してくれるようだ。部屋にシャワーなどはなく、男女共用の大浴場が1階にある。今は先客が使っているらしい。

「風呂が空いたら声を掛けますね。ところで、明日はどちらへ行くんですか?」

明日の予定は特に決まっていなかったが、とりあえず御殿場方面に向かうつもりであると伝えると、主人はJRの時刻表を取り出してきてくれた。

「電車は30分に1本くらいです。9時台の電車に乗るなら、朝食は8時頃にしますか?」

こちらの都合に合わせて朝食を用意してくれるようだ。

「早く出るお客さんもいてね。一番早い方は5時半に出るんですよ」

主人が全て一人で切り盛りしているようだが、融通が利くのはありがたい。

朝食の時間が決まると、いよいよ2階の部屋に案内された。

廊下や階段は赤いカーペット敷きになっていたが、雨漏りだろうか、所々に黄土色の大きなシミが付いている。

部屋は二面窓の角部屋だった。8畳一間にすでに布団が敷かれている。

設備は19型の液晶テレビとエアコン。冷蔵庫はないが、泊まるだけなので困ることはない。トイレは共同のようだ。

▲アメニティグッズ。ブラシ部分に歯磨き粉が付いている懐かしの歯ブラシとタオル。

「エアコンが嫌だったら窓を開けてくださいね」

試しに窓を開けてみたが、この日は風の通りがなく、あまり涼しくなかった。隣のパチンコ屋から時折、「おめでとうございます!」という大当たりの店内放送が漏れ聞こえてくる。

▲窓を開けるとパチンコ屋の駐車場ビュー。

やや気温が高かったので窓を閉めてエアコンをつけた。特有の嫌な臭いもなく、非常に効きがよかったのは幸いだった。「星1」という評価に覚悟を決めて来たが、それほど酷くないではないか。

部屋で過ごすこと約1時間、主人が筆者を呼ぶ声が聞こえた。早くシャワーを使いたかったのだが、先に夕食の準備ができてしまったようである。

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