1つ星の宿にも歴史あり? “ほぼ最低評価の宿”に泊まりに行ってみた【レポート】

翌朝、東の窓から強く差し込む朝日に焼かれて目が覚めた。宿泊したのは10月だったが、今年は夏を過ぎても暑い日が続く。

朝食は8時のはずだったが、時間を過ぎても呼ばれる気配がない。下に降りてみると、ロビーのテーブルに朝食が用意され、主人が待っていた。

「ああ、来た来た。おはようございます。もうすぐ別のお客さんを送りに行くので、どうぞここで食べてください」

朝食はシュウマイにポテトサラダ、卵焼き、カニかまぼこ。付け合わせに千切りキャベツ。味付け海苔も付いている。夕食に比べるとかなり質素だが、炊飯器のご飯は朝炊いたものだった。

別のお客を送りに行った主人は15分ほどで戻ってきた。「東京からですか?」と筆者に声をかけた主人は、この宿の話をしてくれた。

「私の祖父母の代に料理屋として始まったんです。宴会でも仕出しでも、お客さんの要望にはできるかぎり何でも応じる祖父母でした。そのうちお客さんから『泊まらせてくれ』と言われて、旅館業の許可を取ったんです」

旅館として営業を始めたのは昭和30年代らしい。

▲若かりし頃の主人と宿泊客と思われる写真が飾られていた。

「私は東京の割烹料理店で住み込みで働いていたんですが、母が体調を崩したのをきっかけに戻ってきたんです。その後も、宴会のお客さんや合宿の学生さんが来てくれていました。マイクロバスを2台持っていましてね、送迎もやっていたんですよ」

今はマイクロバスを手放し、ミニバンで近場の送迎をしているという。

「でも、私が2年前に心臓を悪くしてからは宴会はやめてしまいました。今は箱根や伊豆に行くゴルフのお客さんが泊まりにきてくれます。箱根だと高いですからね。あとは富士スピードウェイとか」

東京だけでなく、岐阜や大阪から泊まりにくる常連客もいるという。

星1の宿にも歴史あり。御殿場に向かう列車の中で、筆者は“割烹旅館”として賑わっていたであろう往年の宿の姿を想像していた。かつての面影はないが、今では旅人宿としての役目があるのだろう。

ちなみに、昨夜以降トイレを我慢していたので駅のトイレに駆け込んだのは言うまでもない。

▲御殿場駅。

さて、今回の宿の料金は1泊2食で7,020円だった。近隣のビジネスホテルはシングル素泊まり7,000円前後が相場のようだ。金額も加味したうえでの筆者の評価は星2.0としたい。トイレ以外は特に困ったことがなかったので2.5くらい付けてもよいのだが、0.5下がったのは黒い虫の影響とお考えいただきたい。

ところで、“割烹旅館”という言葉が徒らに客の期待値を上げてしまっているのは間違いない。ここは「民宿」に改称し、主人の人柄をウリにしたらどうだろうか。そうすれば口コミ評価も多少は改善される気がした。

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