大井町「大変貌」への布石 京浜東北線を止めた線路切替工事
きょう開業の山手線「高輪ゲートウェイ駅」 注目すべきポイントを一挙紹介
山手線で30番目の駅となる高輪ゲートウェイ駅がきょう14日、品川〜田町駅間に開業した。同線では49年ぶりとなる新駅の開業だが、昨今の新型コロナウイルスの影響で記念式典などは中止。駅前で予定されていた関連イベントも延期が決まっており、静かなスタートとなった。
高輪ゲートウェイ駅は、JR東日本が進める品川駅北側エリアの都市開発計画「グローバルゲートウェイ品川」の中核施設として設置された。品川駅から約0.9キロ、田町駅から約1.3キロの地点に位置し、北西約200メートルには都営浅草線・京浜急行線の泉岳寺駅がある。
このエリアにはかつて、江戸の玄関口として大木戸(関所)が置かれ、明治時代には日本初の鉄道路線が開通した地という歴史的背景を持つ。さらに、JR東日本は上述の「グローバルゲートウェイ品川」に国際交流の玄関口としての役割を持たせることを狙っており、公募の結果、その拠点として設置する新駅の名称を「高輪ゲートウェイ駅」とした。
「和」を意識した開放感あふれる駅舎
駅舎の設計には建築家の隈研吾氏を迎え、国際交流拠点の玄関口として「和」を感じられるデザインとするため、随所に福島県産の杉材等を活用した。4,000平米の白い大屋根は折り紙がモチーフ。中から天井を見上げると、障子のように外光をやわらかに拡散していることがわかる。構内は日本の駅としては珍しい吹き抜け構造で、ホーム階でもこの天井からの光を感じられる。
▲側面もガラス張りのため熱がこもりそうだが、吹き抜け構造のため、風が通り抜けて意外と涼しい。
駅名標がちょっと違う
この写真で、「ある違和感」を覚えた方も少なくないだろう。その違和感の正体は駅名標のフォント。JR東日本の首都圏の駅では通常、駅名標にはゴシック系のフォントが使われている。しかし、高輪ゲートウェイ駅では明朝体が採用されているのである。JR東日本によれば、これは「駅舎の和のテイストと調和させたい」という隈氏の意向だという。
▲外壁の駅名標も明朝体になっているが、木目調の背景だとあまり違和感がないかも……?
2箇所だけ改札機が違う
改札には9箇所の通路が設置されているが、このうち2箇所にはJR東日本が実証実験を進める「タッチしやすい改札機」が導入されている。この改札機は、多くの駅で導入されている「EG20」と呼ばれる機種の改造型で、ICカードのタッチ部が約60度傾いていることが特徴。車いす利用者や背の低い子どもでもタッチしやすいのだという。9月30日までの試験導入のため、終了後は撤去されてしまうので、試してみたい方はお早めに。
また、この改札機にはQRコードの読み取りセンサーも付いており、5月11日からはモニター登録者を対象にQRコードきっぷの利用実験を実施する予定だ。
買ってみたくなる売店
改札を抜けて左手にあるガラス張りの店は無人AI決済店舗の「TOUCH TO GO」。高輪ゲートウェイ駅の目玉とも言える施設だ。
「TOUCH TO GO」では、店内に設置したカメラやセンサーが、客が手に取った商品をリアルタイムに認識する。購入金額が自動的に計算されるため、レジ業務にあたる店員が不要となる次世代の売店だ。
店内には通常の売店と同様に、弁当や菓子類、飲料などが揃っている。特に欲しいものがなくても、試しに何か買ってみたくなってしまうかもしれない。利用方法などの詳細は以下の記事でレポートしているので参照してほしい。なお、「TOUCH TO GO」の営業は3月23日午前6時からとなっている。
50台のカメラで600種類の商品を追跡 高輪ゲートウェイ駅の無人キャッシュレス店舗で買い物してみた
駅とは思えないトイレ
筆者に強い印象をもたらしたのはトイレだ。近年は既存の駅でもリニューアルが進められ、駅のトイレの印象が変わりつつあるが、高輪ゲートウェイ駅のトイレは一味違う。
まずはトイレの開放感。大きな窓から外光が取り入れられており、とても明るい印象だ。もちろん窓は不透明のため外からは見えない。床や天井は杉材で、駅舎全体との統一感を持たせている。奥には隈氏のアイディアで植物が置かれており、これもトイレの印象を変えるポイントになっている。
さらに、手洗い場にはアロマディフューザーが設置されており、トイレ全体に爽やかな香りが広がっている。便器は温水洗浄機能付きで、個室の面積は従来より少し広くなっているそうだ。
そして、出入り口の近くにある姿見は「ミラーサイネージ」になっており、四季の画像や現在時刻などが表示される。将来的には運行情報等も表示する予定だという。
案内も掃除もロボットがお手伝い
JR東日本は、高輪ゲートウェイ駅を「新しいことをはじめる場所」と位置付けており、AIサイネージやロボットを試行導入している。
AIサイネージは利用者の音声を認識して、駅構内や周辺、乗り換えなどを日本語、英語、中国語、韓国語で案内。改札外にも2台設置されている。「好きな食べ物は?」などといった、案内以外の質問に答えてくれるものもあったので、試してみてほしい。
ロボットは6種類で、それぞれ警備や清掃、案内、移動支援等の業務を担う。3月中旬から順次稼働する予定。
正式開業は2024年度
車両基地の再編によって生まれた都心の空白地帯に開業した高輪ゲートウェイ駅。実は今回は暫定開業で、正式開業は前述の「グローバルゲートウェイ品川」のまちびらきに合わせた2024年度の予定だ。正式開業の頃には、駅前に複数の高層複合施設がオープンする。「ゲートウェイ」の名の通り、この駅が世界と日本をつなぐ玄関口として発展していくことに期待したい。
▲「グローバルゲートウェイ品川」のまちびらきに向けて、駅前ではさらに工事が進められる。
▲改札外には、指定席券売機が3台、定期券対応券売機が2台、通常の券売機が1台、ICカードのチャージ専用機が2台設置されている。上部の路線図運賃表が液晶化され、日本語と英語の切り換え表示となっているところも注目ポイント。
▲改札口は西側の一か所のみで、屋内のほぼ全体が改札内エリア。現時点では改札外に店舗などはない(3階の改札外エリアにはスターバックスコーヒーなどが出店するが、オープンは3月23日)。
▲コンコースには窓に面したベンチがあった。目の前には東海道線が通っているので、同じく3月14日に誕生した新型特急「サフィール踊り子」号も見られるかも。
▲縦5メートル、横14メートルの「鉄道テラスビジョン」では、4月1日から高輪の歴史を紹介する映像が放映される。
▲通常、駅の設備は天井に仕込まれているが、高輪ゲートウェイ駅は吹き抜け構造のため、それらが床下に収納されている。ケーブル類が見えないので、ホームもすっきりとした印象だ。