ANAが推進するコロナ対策「ANA Care Promise」を取材した 安心して空の旅を楽しめる取り組みも【レポート】

緊急事態宣言が解除され、人の往来が徐々に再開し始めた。夏休みや「Go To トラベルキャンペーン」などの政府による旅行需要喚起のプロモーションも予定されていることから、旅行の計画を考えている人も多いのではないだろうか。一方で、移動には不安がつきまとうのも事実だ。

そんな中、ANAグループは、安心して飛行機に乗ってもらうための取り組み「ANA Care Promise」を開始した。実際に搭乗し、取材したので対策の模様をお伝えしたい。

搭乗したのは、羽田発那覇行きのフライト。羽田空港は通常時より閑散としているものの、一時よりはフライトが増え、活気が戻ってきたように思える。歩いているのは、スーツを着たビジネスマンやレジャー客など、幅広い。

全ての地上係員はマスクを着用しており、搭乗手続きカウンターにはビニールのカーテンを設置し、乗客と係員の間で距離を保っている。ビニールカーテンがない場所では、社員が手作りしたフェイスシールドを着用し、接客にあたっている。

自動チェックイン機や自動手荷物預け機付近には消毒液等が設置され、乗客はこまめに手指消毒ができるようになっている。利用できる台数を制限するなど、なるべく利用者同士が近づかない工夫も施した。

預け入れ手荷物がなく、座席指定を済ませている場合には、アプリやICなどを使って、直接保安検査場、搭乗口に向かうことができる。人や物との接触機会を極力減らすことができるので安心だ。

保安検査場にはサーモグラフィーが設置されている。羽田・成田・伊丹・関西・中部・福岡の6空港に設置され、乗客は自身の体温を確認できる。機械から発券された保安検査通過証は、乗客自身が受け取る方法に変わった。

一番乗客が密集する搭乗口では、乗客同士の間隔をあけるように繰り返しアナウンスされ、床面に貼り付けられた目安の距離を取って搭乗する人が多くみられた。搭乗口通過後にも消毒液等が置かれ、乗客は各自消毒ができるようにしている。

これらの空港内での取り組みは、羽田空港から開始し、順次全空港へ展開していくという。

機内に乗り込むと、レジャー客を中心に予想より多くの人が搭乗していた。窓側はほぼ埋まっており、通路側の大半は埋まっていたようにみえる。座席指定状況をみても、なるべく他の人と近くなる座席は避けて指定されている傾向がみられた。

日本航空(JAL)やスカイマークは、中央席の販売を一時的に中止。スカイマークは5月31日で措置を終了しており、JALは6月30日まで継続する。国際航空運送協会(IATA)は、「機内での新型コロナウイルスの感染リスクは低く、乗客と乗員のマスクの着用はさらにリスクを軽減させることにつながる」として、中央席の空席義務化に反対の立場を取っている。海外の航空会社も、一時的に行っていた中央席を空席とする措置を終了している。

機内での感染リスクの低さは、機内での空気の流れにも関係している。空気はエンジンから取り込まれ、手術室でも使用される高性能フィルター「HEPAフィルター」でろ過された後、天井裏のエアコンダクトから機内に流れる。その後、窓側座席横を通じて、機外に排出される。空気が全て入れ替わるのにかかる時間は約3分。つまり、空気は上から下にかけて流れており、前方から後方に流れるというわけではなく、機内に長時間空気が滞留しないことが一つの理由だ。

機内サービスは簡略化しており、飲み物は紙パックのお茶、子供用にりんごジュースを配布し、プレミアムクラスでは食事や飲み物を提供する。除菌シートの提供も順次開始し、乗客自身がテーブルや肘掛けなどを消毒できるようにする。座席ポケットには機内誌などは置かれず、要望に応じて提供する方法に変わった。客室乗務員は、サービスや清掃の際には手袋を着用している。機内販売は行っていない。

さらに、国際線では便ごと、国内線では毎日夜間に機内の消毒を行っている。国内線では、トイレの清掃や除菌を便ごとに行っているものの、客室乗務員がフライト中、何度もドアなどを拭き取る姿もみられた。

新型コロナウイルスの蔓延により、移動に大きな不安が伴う状況が続いている。これまでと違って不便な点もあるものの、より多くの人が安心して移動できるようになるには、利用者も協力して、新たな空の旅の日常に慣れていく必要があると感じた。