「Go To トラベルキャンペーン」をより効果的にする5つの提言【永山久徳の宿泊業界インサイダー】

(2)Go To トラベルキャンペーンを使いたくても使いづらい人の存在

キャンペーンの利用が進まないのは、識者や利用者が再三指摘しているような制度設計の不備や手続きが非合理的で煩雑であるにもかかわらず強行スタートしたことによる問題も大きい。そもそも委託費問題で制度設計するべき主体が決まらず、準備期間が半減したのだから見切り発車は最初からわかっていたことだ。それに輪をかけて、東京除外の混乱が追加されたのだからどんな受託者でも混乱を避けることはできなかっただろう。しかし、時間が経過した今でも事業者の混乱は収まらない。事業者登録できているかどうかさえわからない施設、入金日がわからず資金サイクルの目処が立たない施設、一日中コールセンターに繋がらず顧客とのトラブルに繋がる施設…枚挙に暇が無いが、このあたりの事例詳細は多くの関係者が指摘しているので割愛する。

問題はこのスキームが完全に旅行者を無視してしまっていることだ。例えば、登録された事業者リストは法人名であり、顧客が知り得る「屋号」ではない。市営のホテルは事業者リストでは「〇〇ホテル」ではなく「〇〇市」なのだから利用者に分かるはずがない。なのに、事後申請書類には屋号の記載が必要だが法人名の記載箇所は無いなど利用者にはまず理解不能だ。

また、旅行会社の店舗、オンライン旅行代理店(OTA)、直予約など予約経路によってキャンペーンの利用方法がバラバラなのも混乱を招いている。私の経営する旅館でも(予約数は例年の半分以下にもかかわらず)、予約スタッフは顧客からの電話応対で予約方法、適用方法の説明に忙殺されている。

旅行業者、運輸、宿泊施設、観光施設など、それぞれの事情はよく分かるし、システムの都合や開始までの時間的制約があったことにも十分理解できるが、私が年に1度家族旅行する程度のトラベラーならまず理解不能だ。今さらではあるが、すべて事後申請による還付方式に統一したり、現金決済は対象外にするなど、事業者や顧客により方式が違うという混乱を少しでも緩和できなかったものだろうか。現行ルールは残念ながらユーザー無視の、かえって旅行者を遠ざける制度になってしまっている。宿泊施設の登録が進まないのは、もちろん単に煩雑だからという場合もあるが、顧客にストレスを与えることを嫌う、顧客最優先の矜恃を持った施設も含まれていることも知っておいて欲しい。今後控えている地域共通クーポンやGo To イートキャンペーンなどでも複雑なスキームが検討されていると聞く。利用者の不公平を解消するための心配りがかえって混乱と利用者離れを招く事の無いように願う。

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