止まらぬGo To トラベルの混乱、原因は「SNS」と「業界団体」【永山久徳の宿泊業界インサイダー】

同業他社はもちろんその情報をすぐに発見し疑問を呈したのだが、今回はその告発方法が内部リークではなくSNSにおいて直接利用者に広く知らしめ、そうして盛り上がった話題が赤羽国土交通相を筆頭とする行政担当者や事務局の目に留まり、応急措置として個別ケースごとに対応策を発表するというパターンが成立してしまった。

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今回問題になった3万円利用券付プランも、同業者の何人かがSNS上で「やり過ぎだ」と苦言を呈し、それを見た赤羽国土交通相が「すぐに対応する」と反応、翌日には制度の見直しが発表されたものだ。地域共通クーポンにおいて、宿泊施設や旅行代理店が非効率なゴム印を大量に押さなければならなかった問題もSNS上での声が大きかったことからプリンタ可と修正が成された。これもスピード感のある対応なのだが、問題点の本質を検証する間も無く、全体最適を検討される前に個別に制度が改変される状況は決して好ましいことではない(プリンタ可にしてもらう前に、対象エリア印刷済みのクーポンを納品してもらう方が余程有難いのだが…)。

SNS上で声を上げればすぐに制度が変更されるという現実は単なるモグラ叩きに過ぎず、そのモグラもSNS上で声の大きな人が指摘したもののみになってしまうからだ。追加された指針において、免許取得やコンパニオンなど問題視されたものは対象外であるとして例示されたものの、その他については相変わらず「個別具体的に支援の対象外とするか否かを判断いたします」とあるので、拡大解釈や抜け道ビジネスは今後も際限無く続くだろう。教習所が悪い訳でも、コンパニオンが悪い訳でもない。ビジネス利用も会社ぐるみの補助金奪取でなければ問題は無かっただろう。要は「程度問題」であったはずのものが、あれはOK、これはNGという各論に陥ってしまったのは、行政が現場の声に敏感過ぎたことが一因であったと考えられる。

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