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就活にも「おもてなしの心」 ANAグループがコロナ禍で始めた新・就活講座
コロナ禍で航空業界への影響が長期化し、国内大手各社は2022年度も新卒採用を見送ることを決めた。こうした中、客室乗務員(CA)やグランドスタッフ(GS)志望者が多く通うエアラインスクールも新たな策を打ち出している。「ANAエアラインスクール」を実施していたANAビジネスソリューション(ABS)は3月から、航空業界に限らず全ての業界を対象とした就活対策講座を始めた。
ABSの就活対策はこれまで、「ANAエアラインスクール」として主に航空業界の志望者向けに開講。2013年からこれまでに、約4,200人の受講生を航空業界をはじめ各業界に送り出してきた。ところが2021年度の新卒採用では、新型コロナウイルスの影響で航空業界の採用活動が著しく縮小。ANAグループは2022年度採用も一部を除いて中止する判断を下し、これに伴い同スクールも全講座の中止が決定した。
そこでABSでは、航空業界に限らず、全ての業界・業種の就活に対応するプログラムを手掛けることを考案。「就活ジェネラルコース」として3月から新たにスタートさせた。同コースでは、従来のエアラインスクールの内容から、特に航空業界に焦点を当てていた企業研究などを取り払い、全業界に対応できるよう改良。印象アップ・コミュニケーション・就活準備・自己分析・面接実践・社会人要素養成を軸にした6講座を用意した。講師は従来と同様にANAの現役客室乗務員(CA)が担当し、全ての講座で、ANAグループが重視する「おもてなしの心」をベースに就活のノウハウを伝える。従来の講座は東京または大阪での対面講座だったが、新たにオンライン講座も開設。全国でANAの講座を受けられるようになった。
ABSで講師を務める斎藤志帆さんは、今回のプログラムを始めた背景を次のように説明する。
航空業界だけでなく、どんな業界でも通用する人材を育てる
「ご存知の通り、コロナ禍でエアライン業界は尽く採用が縮小しました。21年卒は途中まで選考が進んでいたものの、方向転換して全く違う業界を受けることになるという大変な世代でした。ところが、最終的に蓋を開けてみると、エアラインスクール受講生の9割以上は内定を獲得できたのです」
内定先は接客業だけでなく、金融、商社、ITなど業界も様々で、大手企業もあったという。内定を獲得した受講生にインタビューしてみると、「スクールで教わったことをしっかり行動化できたから」という声が多く聞かれたという。
「私たちが伝えてきたことは航空業界だけでなく、どんな業界でも通用する人材を育てることができるのだなと。それなら、エアライン向けではなく全ての就活生をサポートし、よい人材を送り出せるようにしようと」
2019年に従来のエアラインスクールを受講生した村上隼汰さんも、講座の内容は他の業界にも通じる部分が多いと話す。
「特に印象に残っているのは『声のトーン』です。相手にアプローチするときの声の高さ、安心してもらえるような声の掛け方。これは航空業界のみならず、他の業界でも使えると思いました」
受講後は就活に対するモチベーションに大きな違いが生まれ、「これから自分が何をしていきたいか、何をするべきかが明確になり、自信に繋がった」と話す村上さん。複数の内定を獲得し、進路を航空物流業界に決めた。
コロナ禍でより重視される“思いやりの気持ち”
コロナ禍では入社式が中止されたり、リモートワークが主体になったりと、会社内でも人と触れ合う機会が大きく減少した。そうした状況だからこそ、社会では自分からコミュニケーションを取りに行く主体性や自主性がより必要になった。斎藤さんは、昨今の就活では“思いやりの気持ち”がより大切になっていると説明する。
「ANAの強みはコミュニケーション力やチーム力です。基本的なことですが、その根底にも『相手を大切に思いやる気持ち』があります」。プログラムにも“思いやりの気持ち”をノウハウとして取り込み、毎回の講座で行動化してもらうという工夫を凝らした。
「『一緒に働きたい』と思ってもらえる人を育てたいですね」と意気込む斎藤さん。「講座が終わったときには、『(自分が)変わった』という充実感を得られると思います」。