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JR東日本が新大久保で始めた「キムチ、ドリアン、カルダモン」とは? 話を聞きに行った
「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ,ドリアン,カルダモン,,,)」(以下、「K,D,C,,,」)
JR東日本がそんな名前の施設を新大久保の駅ビル内に開業した。一見「新しいエスニック料理店?」と思ってしまう名称だが、実はただの飲食店ではない。ここは、新進気鋭の料理人が腕を試すシェアダイニングや、「食」に携わる様々な人と交流できるスペース、キッチンが設けられた「駅ナカフードラボ」である。山手線の各駅の“個性”を引き出し、感動的な都市生活空間の創造を目指す同社のプロジェクト「東京感動線」の取り組みの一つだ。
この施設を通して同社が提案するのは、「新しい食文化と、食を通じた新たなライフスタイル」。山手線沿線で「国際的」なイメージが第1位(同社調べ)であり、駅周辺にも多国籍の飲食店が並ぶこの街にうまく調和しそうな気がする。
施設名の「キムチ、ドリアン、カルダモン」は、新大久保に集まる各国の無数の食文化が混在する“カオス”を表現している。実は「Cardamon」のあとには「Beans, Chicken, Okura,,,」と99の食材の単語が続き、最後は「encounters with new food culture(新しい食文化との出会い)」と締め括られている。
「K,D,C,,,」が入居するのは同駅ビルの3・4階。3階は一般客も利用できるシェアダイニング、4階は会員制コワーキングスペースだ。シェアダイニングには本格的な厨房が3か所設けられている。ここは、独立を目指す料理人や、テストマーケティングをしたい企業などに出店してもらう挑戦・成長の場。訪れた一般客にとっては、各店舗の“挑戦の味”をフードコートのよう楽しめる、いわば食のエンターテイメントの場だ。5月末まではオープニング企画として、SDGsやフードテックなどの切り口でセレクトされたポップアップ店舗が展開する。
コワーキングスペースは個室や会議室も備えた310平米の広さ。生産者や研究機関、ベンチャー企業、フードライターなど、「食」の世界に携わる人、これから携わりたいと思っている人なら誰でも利用できる。奥のフリースペースには、生まれたアイディアをすぐに具現化できるコミュニティキッチンを設けた。惣菜・菓子の製造許可を受けた厨房も併設しており、開発したプロダクトを一般向けに提供・販売することも可能だ。
JR東日本はこの施設を、食を愛する人が互いに学び合う「食の交流・発信拠点」に成長させていきたいという。
▲3階シェアダイニングの厨房。調理器具も揃っているため手軽に出店できる
「『フードラボ』というと聞こえが男性的で、“研究”感がある。カンファレンスやセミナーに行ってみても、8〜9割が男性ということが多い」。こう話すのは、「K,D,C,,,」を担当したJR東日本 東京支社の服部暁文さんだ。そうした場では、いかにも売れなそうな商品が提案されることも少なくなかったという。フードラボと銘打った施設を立ち上げるからには、開発したプロダクトがどうしたら一般消費者に届くのか実験する機会も提供する必要があると考えた。
そこで「K,D,C,,,」では、JR東日本グループ企業や趣旨に賛同するパートナー企業の協力で、これから食領域でプロフェッショナルを目指す人に対して人的資源や食材・販路等をサポートする仕組みを構築。第一号として、食材宅配事業を手掛けるオイシックス・ラ・大地のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、Future Food Fundが参画している。
まずは販路開拓・流通支援として、出来上がったプロダクトを駅ナカのコンビニ「NewDays」で販売できるようにした。今後もグループ各社との連携を広げ、駅ビルやECサイトでも販売できるよう検討中だという。さらに、起業を目指す人やスタートアップ企業にはファイナンスサポートも提供する。また、マーケティングには若い女性が多い新大久保という街の特性が活かせる。そうした客層をターゲットにしたい人にとっては、3階のシェアダイニングはうってつけの場だ。SNSとの親和性も高い。
「お客様との社会的な接点が多いのがJR東日本グループの特徴。それが強みになると思っている」と自信を示す服部さん。4階のコワーキングスペースも各々が粛々と作業するのではなく、食のイノベーションに取り組む人同士や、同社グループスタッフらとの交流の場所としてもらう意図がある。今後は食に関わるセミナーや起業支援のプログラムも開講する予定だという。
世界中の食文化が集まるこの街に現れた「K,D,C,,,」から、これからどのような食体験が生み出されていくのか注目だ。