ニュージーランド航空、「謎のチキンのチャンピオン」に対して名乗り出るよう申し出
CAが踊りホヌが飛ぶ ANAがZ世代のSNS「TikTok」に乗り出したワケ
昨今、SNSを活用した企業の広報活動は普遍的なのものになり、TwitterやInstagramでは多くの企業アカウントが各社独自のPR戦略でユニークな投稿を繰り広げている。一方、直接的な購買力のない中高生ユーザーが多いとされるTikTokに進出している企業は多いとは言えない。全日本空輸(ANA)は、既存のFacebook、Twitter、Instagramアカウントに加え、7月にTikTokアカウントを開設。従来のイメージと一線を画すコミカルな動画投稿が話題を呼び、運用開始から約5か月でフォロワー数は約4万人に達した。ANAがTikTokに乗り出した狙いは何なのか、どのような運用戦略を描いているのか。担当者に聞いた。
「若年層のANAファンを増やすのが一番の目的」と話すのは、TikTokの運用を担当する広報部の槻本裕和さん。他のSNSは以前から積極的に運用していたものの、若年層の利用者は多くない。発信できる情報もテキストや静止画が中心だった。一方、TikTokはZ世代のユーザーが多いとされ、コンテンツは十数秒〜数分程度のショートムービー。槻本さんは「動画や音楽はわかりやすく、共感を得られ、人の心を動かす力があると思っている」と分析する。
ANAユーザーの年齢層は30代〜50代が中心だが、次のユーザーとして見込まれるのは現在の10代〜20代だ。そこで、現在は接点が少ないZ世代の若年層に、早期にANAを認知してもらう手段として「勢いのあるTikTokを活用してみようという話になった」という。
運用は広報部のスタッフ10数人でスタート。ANAという会社を身近に感じてもらうため、ビジネス寄りではない、手作り感のある動画作りを心がけた。ランプエリアから撮影した飛行機の離陸シーンや、制服姿の社員が音楽に合わせて踊る“TikTokらしい”動画、新たに導入したサービスの紹介動画など、週に5〜7本の動画を投稿。いずれも完全内製で、撮影は社用のスマートフォン、編集にはTikTok向けの無料アプリ「CapCut」を使っているという。
“活き活きとした会社なんですね”
9月からは、元々SNS運用が得意だったという羽田空港グランドスタッフの若手社員2人がメンバーに加わった。2人は月に4日ほどTikTokの運用業務に参加。現場の視点を取り入れた動画の企画立案から、撮影・編集まで任されている。日々の業務の中で利用者からの認知が低いと感じた設備やサービスをテーマにすることが多いという。最近では、受託手荷物の制限品や、羽田空港でのスターフライヤー運航便の発着ターミナル変更について寸劇で紹介する動画を投稿した。
12月7日時点で、動画の総再生数は720万回、総いいね数は32万に到達。若年層と見られるユーザーからは、「楽しく活き活きとした会社なんですね」や「お茶目な一面が見られてほっこりした」といったコメントが寄せられた。槻本さんは、「コメントを見ると、女性や未成年、中高生がかなり多いようだ。今までカバーできていなかった領域に刺さっている」と効果を実感している様子だ。
ECとの連携は?
TikTokはECとの親和性が高い。中国版アプリではすでに決済機能が導入され、ライブコマースプラットフォームとしての色も濃くなっている。国内版でも将来的にはECサイトとの連携機能が搭載される見通しだ。ANAアカウントも、公式ECサイト「A-style」と連携すれば直接的な商品購入に誘導できそうだ。しかし、槻本さんは「広告色が強いものは共感を得られにくい」と考えている。ANAが重視するのは、あくまで純粋なコミュニケーションツールとしての機能だという。
TikTokを通して「親しみやすさや、ANAらしいあたたかいところを出していければ」と話す槻本さん。コロナ禍で航空業界に接する機会が減少している若年層に対し、新たなSNS戦略でアプローチすることで、将来のANAファンを獲得を目指していく。