ANAが見据えるコロナ後の航空業界、”第3ブランド”やピーチとの関係を聞く【ANAHD・片野坂社長インタビュー全文】

ー2022年度に就航する第3ブランドのLCCは、ボーイング787型機でアジア・オセアニアへ飛ぶ。どのように事業を成長させていく計画か。
LCCとは、という考え方は難しい。ANAはフルサービス、ピーチはLCC、第3ブランドは何か。就航路線、ターゲット、機材のコンフィグレーションの議論を本格化させている。制服も決めていかないといけない。独自の便名でブランド名を決めていく。CAも制服委員会を作って検討を始めた。新しい航空会社を作るとはいえ、エアージャパンという整備規程や運航規程を持っている会社を母体としていくので、そういう意味で会社を作る手間は少なく、かなり効率的に準備ができる。大事なのはどういうマーケットで、どういうお客様をターゲットにするか。

ーANAがすでに運航している路線の一部、もしくは全てを移管するようなことはあり得るか。
需要が多いところ、需要が少なくニッチで攻めるの2つがある。ANAでは収益上難しい路線の就航もあるだろうし、独自にその会社がターゲットにできるディスティネーションは、アジア・オセアニアにきっとあると思う。決まっているわけではないが、例えば一日に複数運航している路線では、昼に飛ぶか、夜に飛ぶかが大きな選択肢になる。夜中に飛ぶのであれば食事は出さなくていい、こういったこともこれから決めていく。

ーどういった都市に飛びたいと考えているか。
お客様が多い所に飛びたがるが、単独で誰も見つけていない、誰も気づかないようなところ、日本からまだどこも飛んでいないようなところがあると嬉しい。ANAの国際線は最初にワシントンを選んだ。ANAのこういうDNAは 是非ピーチや第3ブランドにもこういうところを受け継いで欲しいと思っている。

単独路線の魅力と言うか、(ANAでは)日本から行くとメキシコシティとかヒューストン、ウィーンとたくさんある。いわゆるLCCマーケット、レジャーマーケットを抜いても東インドの中とかにある。そういったところは研究して、そこで築けるとライバルが入ってくる。そして収益が落ちたりして、別のマーケットを探す。だから未来永劫安定的なマーケットはないという風に思ったらいいと思っている。このニッチなマーケットもテーマ。

ー新規のマーケットの開発は大変なところがある。
航空会社は土地を買って工場を建てなくてもいい。ジャストフライ。ちゃんと空港があり、飛行機を離発着できるところはどこでも可能性がある。

ーエアージャパンには、4月時点で800人の従業員がいる。当面はANAブランドと第3ブランドの運航、この2つをやっていくのか。
エアージャパンは外国人のパイロットとエアージャパンの客室乗務員で、第3ブランドとANAブランドの機体の運航を担うことになる。今は、外国人のパイロットには一旦帰国してもらっているが、外部出向などを活用しながら対応している。

ーZIPAIRは2クラス290席で、ビジネスクラスとエコノミークラスでかなり余裕がある。第3ブランドで運航するボーイング787
型機の客室仕様をどう考えているか。

できる限り座席を多くしていくのが成功の秘訣だと思っている。基本的には座席が多い飛行機の方が、ピーク時に稼ぐことができる。これがエアラインビジネスの原則。ただお客様も機内の快適さなどに非常に敏感、そういったところを十分考慮したうえで決めていきたい。

ー欧米路線はどのように考えているか。
まずはアジア・オセアニアからと考えている。この距離は、太平洋を含めてかなりディスティネーションの可能性が高い。でも面白い。ヨーロッパとなると機内食とか、座席も減ってくるので、チャレンジングと考えている。

そのため、(ZIPAIR Tokyoが)西海岸にチャレンジするのは注目している。西海岸に運航するということで、どのようなサービスやオペレーションをするのか関心を持っている。

ピーチは10年以上の歴史があるが、韓国とか台湾、沖縄からのバンコク路線など実績を重ねてきている。エアバスA321LRはロンドンからセーシェルというインド洋まで飛ぶ実験をエアバスがしている。能力的にはそれぐらいの航続距離は持った飛行機ではある。

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