令和に「なっぱ電車」復活? 京成電鉄が始めた貨客混載、「収益化」ではないその目的

JR各社をはじめとする鉄道事業者が、旅客列車で魚介類や農産物を運ぶ貨客混載輸送の取り組みを加速させる中、京成電鉄も、3月から貨客混載輸送の実証実験を始めた。

実証実験では、千葉県産の野菜を京成佐倉駅で定期列車に積み込み、成田空港駅まで貨客混載で輸送。運んだ野菜は空港内にある京成グループのレストランのメニューとして提供する。取り扱うのは、カボチャ、ナス、トロロ芋、シイタケなど。初回は3月11日で、6月頃まで週1回程度実施して安全性やコストを検証する。京成電鉄によると、同社が貨客混載輸送に取り組むのは初めて。

3回目の実施となった19日は、サツマイモとシイタケ、レタス計約13キロを運んだ。キャリーカートに載せた段ボール2箱を、スタッフが午後1時29分京成佐倉発の列車の先頭車両に積載。列車は同54分に成田空港に到着し、運んだ野菜は第1ターミナル内のレストラン「京成友膳」で天ぷらなどとして提供した。

▲積み込みの様子は、かつて京成電鉄が運行していた「なっぱ電車」と呼ばれる行商専用車を彷彿とさせる

貨客混載輸送に取り組む多くの鉄道事業者の狙いは、コロナ禍で減少した旅客収入を補う新たな収益源を確保することだ。しかし、京成電鉄の狙いはそれとは異なる。「輸送する農作物には規格外野菜を含んでいる」と説明するのは、鉄道企画担当課の伊藤隆広課長。実はこの取り組みで扱う野菜は、佐倉市を拠点として農作物のフードロス削減に取り組む「チバベジ」が販売するものだ。表面に傷があったり、大きさが通常の市場流通の規格に合わない県内産野菜を京成グループのレストランで活用することで、食品ロス削減や地産地消の観点からSDGs達成に貢献するのが、京成電鉄が貨客混載輸送に取り組む大きな目的だ。規格外とはいえ、味は通常の野菜と変わらない。京成友膳を運営するイウォレ京成の東原光陽社長は、「味わいもよく、リードタイムなく提供できる」と太鼓判を押す。

さらに今回の取り組みには、同レストランへの野菜の納入をトラックから鉄道にモーダルシフトすることで、CO2削減に繋げる狙いもある。伊藤課長は、「貨物輸送で収益をあげる考え方もあるが、今回の場合は結果として沿線や京成グループのPRにもつながれば」と話す。

今回は実証実験として京成佐倉〜成田空港駅間の18.3キロという短距離での実施となるが、伊藤課長は「実証結果を踏まえ、(他の生産者などから)ニーズがあれば積極的に取り込みたい」と取り組み拡大に積極的な姿勢を示している。

▲先頭車最前ドア付近は車いすスペースのため、2ドア付近に積み込み

▲成田空港での荷降ろしの様子

▲貨客混載輸送で運ばれたサツマイモとシイタケの天ぷらが付く「大海老天ざるそば」