ANAグループ、「ANAにキュン! BLACK FRIDAY!」を開催
羽田〜帯広2時間31分 JAL、パイロットが“本気で”企画した737チャーターイベントの全貌
「プッシュバック・アプルーブド、ランウェイ16L。ヘディング・サウス、ディパーチャーランウェイは南風運用、ランウェイ16Lからの出発となります」
「オリジナルのフライトプランは高度21,000フィートでファイルされていましたが、揺れが予想されていたため、出発前のブリーフィングで31,000フィートに変更しました」
日本航空(JAL)の東京/羽田〜帯広線の機内で、こんなマニアックなアナウンスが聞こえてきた。
実はこれは、JALが6月11日に行ったボーイング737型機を丸一日満喫できるという企画で運航されたチャーターフライトの中で流れたもの。737乗員部のパイロットらが“本気で”企画したというこのイベントには、航空ファンや親子連れなど109名が参加。ボーイング737-800型機の国際線用機材(機体記号:JA317J)を使ったチャーターフライトで帯広に行き、現地でパイロットや客室乗務員のトークショーを聞いたり、コックピットを見学したりした。1名37,000円からで、抽選倍率は約8倍だったという。
▲パイロットがプライベートで制作したという専門用語満載の「旅のしおり」
午前11時40分に羽田空港を出発したチャーターフライトのJL4529便には、岡村慶正機長、荒木雄次郎機長の通常の2名のパイロットのほか、解説担当として光井淳彦副操縦士が搭乗。フライト中は逐次、冒頭の台詞のように航空機の操作やコックピット内のパイロットの動きについて機内アナウンス(PA)で説明した。参加者に事前に配られた「旅のしおり」は光井副操縦士が「個人的に制作した」というもので、羽田・帯広両空港のアプローチチャート解説など、こだわりの内容が盛り込まれていた。
また、客室乗務員も通常の4名に加え、地域活性化に取り組む「JALふるさとアンバサダー」と「JALふるさと応援隊」が各1名の計6名が乗務。機内で十勝地方の見どころをアナウンスで紹介した。
東京/羽田〜帯広線は通常、羽田空港から日本列島上空を北上し、東北地方から太平洋に抜けて帯広空港にアプローチする。今回のチャーターフライトでは参加者に機窓からの景色をより楽しんでもらうため、山形市、青森市、函館市の上空付近を経由し、日高地方を通って帯広空港に向かうルートを設定。巡航中は地上の様子がよく見えるよう、通常は30,000フィート前後で飛んでいるエリアを13,000〜19,000フィートで飛行した。大きな見どころとして紹介されていた日高山脈は悪天候のため見ることができなかったが、晴天の函館市付近では低高度で2度周回。金森赤レンガ倉庫や五稜郭タワーをしっかり視認できた。
帯広空港には午後2時11分に到着。定期便では約1時間30分で飛行できる区間を2時間31分かけて飛ぶという、まさに“満喫”フライトだった。
現地で行われたパイロットと客室乗務員のトークショーでは、乗務前のブリーフィングの様子を参加者に披露。フライトの合間に乗務員が食べるクルーミールなど、仕事の裏話も紹介した。また、機体見学会ではフライトに使われたJA317Jの機側に近づいて、整備士から機体の解説を受けたり、岡村機長から乗務時のエピソードを聞くことができた。機内ではPA体験の時間もあり、「東京/羽田発、ジョン・F・ケネディ国際空港行きです」などと思い思いの設定でアナウンスする参加者もいた。
このほか、帯広空港にキャンパスを置く航空大学校の協力で、同大学の格納庫を見学できる時間も設けられた。チャーターフライトを担当した荒木機長は同大学校の出身で、吹雪の中で訓練飛行した思い出など、在学時のエピソードを参加者に披露した。
企画を発案した光井副操縦士は、「天気がよければより楽しんでいただけたかもしれないという気持ちもあるが、難しい天気でパイロットがどのようなことを考えて飛んでいるか、安全運航に対する取り組みを紹介できたと思う」と話した。
▲機内サービスする4名の客室乗務員は全員、北海道担当の「JALふるさと応援隊」
▲陸奥湾上空を飛行。左側の機窓からは津軽半島を走る北海道新幹線が見える
▲配布された地図を見ながら「JALふるさとアンバサダー」による十勝地方の解説を聞く参加者
▲約2時間半のフライトを終え帯広空港に到着したJL4529便
▲チャーターフライトに使われた国際線仕様のボーイング737-800型機
▲帯広空港でのトークショーでパイロットの持ち物を紹介する光井淳彦副操縦士
▲トークショーに参加した(左から)馬場照久機長、光井副操縦士、小林千秋CA