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どうなる?JALの新ステイタス 現役上級会員が徹底分析【コラム】
12月14日、日本航空(JAL)から突如として、JALマイレージバンクの「新ステイタスプログラム」が発表された。本稿では、現役上級会員の筆者が、この変更を深掘りしていくことにする。
現行の「FLY ON プログラム」とは
新ステイタスプログラムは、2024年1月からスタートすると発表された。一方で、JALの現行の上級会員プログラムである「FLY ON プログラム」も継続する。
改めて「FLY ON プログラム」についておさらいをしておこう。「FLY ON プログラム」は、JALを含むJALグループ便またはワンワールド アライアンス加盟航空会社便への搭乗によるフライトマイル積算によって加算される「FLY ON ポイント」によって計算されている。
毎年1月から12月までの間の「FLY ON ポイント」の獲得ポイント数または同ポイントの獲得した搭乗回数によって、4つのサービスステイタスを獲得できる。
わかりやすくステイタスの基準を説明すると、「クリスタル」が30,000FLY ON ポイントまたは30回搭乗、「サファイア」が同50,000ポイントまたは50回搭乗、「JGCプレミア」が同80,000ポイントまたは80回搭乗、「ダイヤモンド」が同100,000ポイントとなっている。実際のステイタス判定基準にはJALグループ便への搭乗条件があるため、詳細な説明は公式サイトに譲ることにする。
上級会員の特典としてよく想像される空港での航空会社ラウンジ(JALでは主に「サクララウンジ」)の入場権利は、「サファイア」以上となる。また、「JGCプレミア」「ダイヤモンド」は、JALの上級会員制度では最優先に取り扱われ、「サクララウンジ」より入場対象が絞られた「ダイヤモンド・プレミアラウンジ」「ファーストクラスラウンジ」へ入場することができる。その他、ステイタスの取得難易度に比例するように、手荷物許容量やマイル積算率などの各種特典が変化する。
さらに、「サファイア」以上のステイタスを達成すると、「JALグローバルクラブ(JGC)」の入会資格を得ることができる。「JALグローバルクラブ」に入会すると、入会後の搭乗状況にかかわらず、制度が続く限り、年会費を支払えば半永久的にマイル優遇や空港ラウンジへのアクセス、手荷物優待を受けることができる。
同様のサービスを提供しているANAの「スーパーフライヤーズクラブ(SFC)」とともに、一度入会資格を得られれば永続的な優待を得られるとあって、この入会資格を目当てに飛行機に乗る「JGC修行」「SFC修行」は、ご存じの方も多いのではないだろうか。
現在のJALの上級会員制度を踏まえたところで、「新ステイタスプログラム」の予告は次の通りとなっている。
「新ステイタスプログラム」は2024年1月から
2024年1月からの「新ステイタスプログラム」のステイタスポイントは、「JALグループ便の搭乗やツアーの利用など飛行機のご利用時はもちろん、JALカードでの決済やJALショッピングでのお買い物をはじめとした日常生活におけるサービス利用、JALが推奨する環境にやさしい活動への参加などによって獲得」できるとしている(原文のまま)。
新しいステイタスランクの達成イメージとして、搭乗が少ない場合でも、「数年後には最初のステイタスランクに到達」でき、搭乗が多い場合は、ステイタスランクの達成スピードが加速し、現行上級会員制度にない特典も用意するという。現行の上級会員資格は、原則飛行機の搭乗でしか獲得できないため、飛行機の搭乗とそれ以外で、どのように獲得難易度を設定するかなど、サービスデザインが気になるところだ。
新しいステイタスポイントは、1暦年でリセットされた「FLY ON プログラム」と異なり生涯たまり続けるという。したがって、会員のライフスタイルにあわせて、会員それぞれのスピードでステイタスランクを目指せるとしている。
この新しいステイタスポイントによって達成した新しいステイタスランクでは、サクララウンジサービスの体験から始まり、JALグローバルクラブへの招待やマイル有効期限の無期限化、最上位のJALラウンジを利用できる特典など、ステイタスランクが上がれば上がるほど、JALの上質なサービスを生涯にわたって利用できるという。
新ステイタスプログラムは、原則クレジット機能付きJALカード(CLUB-Aカード、CLUB-Aゴールドカード、JALダイナースカード、プラチナ)を保有することが条件。海外地区会員で、JALカードを保有できない場合は別の条件になるという。これら新プログラムの詳細は2023年秋頃案内予定となっている。
あまりJALに乗らない層の取り込みがカギか
今回の発表をくまなく見てみると、「ご搭乗の多いお客さま向けのFLY ON プログラムは引き続き継続」するとのことだ。クリスタル、サファイア、JGCプレミア、ダイヤモンドの各ステイタスも継続するという。今後も全く変わらないとは言えないものの、このステイタス制度は当面の間大きく変化せずに継続するとみて問題ないだろう。
JALのヘビーユーザーには、現行上級会員制度を維持することによって囲い込みを続ける一方、あまりJALに乗らないという客へどう囲い込みをするかが、JALにとって課題になっていると思われる。
ANAでは2021年から、ANAカードの決済額やツアーの利用、空港売店・機内販売・EC、住居や保険、納税など自社で展開する様々なサービスの利用数や利用金額をもとに上級会員資格を付与する取り組みを始めた。
今回、JALがANAに追随するような動きを示したのは、新型コロナウイルスの流行によって、航空会社の経営モデルが簡単に崩れうることが浮き彫りになったことが大きく影響しているとみられる。
現行の上級会員制度では、客が飛行機に乗ることによって得意客を囲い込んでいるが、疫病や戦争、テロなど環境の変化により、飛行機に乗りたくても乗れなかったり、利用を控えたりする動きは、今後も起こりえる。そういう状況に陥った場合でも、何らかの形で得意客と接点を持ち続けたいという航空会社の危機感と思惑が、世界中の航空会社で広がっている。
新ステイタスプログラムは、現行の上級会員制度を併存しており、搭乗頻度の高い現状の得意客に加えて、あまり搭乗しない客も得意客として囲い込もうという強い意志が垣間見える。
「JGC修行」の排除が裏の狙いか
「JALグローバルクラブ」の入会基準の厳格化は避けられないとみられる。
「サファイア」以上のステイタスを達成すれば、指定のクレジットカードに入会することで、自動的に「JALグローバルクラブ」も入会できるのは、2023年1月から12月の搭乗実績によって付与された会員資格までとなる。2024年1月の新ステイタスプログラムの開始後、「JALグローバルクラブ」の入会基準は、新しいステイタスランクによって判定される。
この新しいステイタスランクは、JALグループの生涯搭乗記録や、日常生活におけるサービス利用実績からポイントが計算され、ステイタスが判定されるため、1暦年の搭乗実績を基準として「JALグローバルクラブ」に入会できる現行の状況は大きく変わるだろう。小手先の”修行”で「JALグローバルクラブ」に入会できる状況にメスが入ることは、ほぼ間違いないといえる。
「改悪」ではないものの、今後の先行きは不透明
「新ステイタスプログラム」の発表が大きく注目されており、ウェブ上では「改悪ではないか」という声もある。
現在の情報から判断するに、現状の上級会員制度「改悪」である可能性は低いものの、今後の制度変化によっては影響が懸念される。また、「JALグローバルクラブ」の制度設計については、方針が変わる可能性が高い。
現行の「JALグローバルクラブ」会員は、新ステイタスプログラム開始後も、同会員として引き継がれることになっている。「JALグローバルクラブ」への入会を検討しているのであれば、制度改定前に入会しておいたほうが良いだろう。既存会員などの他の利用者には、この新ステイタスプログラム開始の影響が現時点では少ないとみられるが、引き続き注視する必要はありそうだ。