スタイリッシュさと清潔さが光る西成高級ホテル「HOTEL SUNPLAZA Ⅱ」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(12)】

部屋は洋室をセレクト(和室でも同料金)。ドアを開ければ花をモチーフとした壁紙の、あまりのスタイリッシュ感に驚き、笑いさえこみ上げた。

たしかに3畳一間だが、ここまで突き詰めた演出で、もはや西成の片りんすら感じさせない。テレビも冷蔵庫もあり、独立型のエアコンも設置されている。もちろん無料Wi-Fiもあり、コンセントも2か所あり、しかも1か所のほうはUSBコードがダイレクトに挿入できる。時代の流れという言葉が、脳裏をよぎった。

ただ、少々の欠点も見受けられた。

まずは、ハンガーは木では無くてステンレスタイプなのは良いが、2本しかない。何度も書いているが、西成ホテルの宿泊者は洋服などを洗濯する方も少なくないので、できれば3本あると嬉しい。

あと、和室の場合は違うが、洋室の場合はテーブルが高すぎる。おそらく椅子を配置することを想定されていたのだろうが、椅子が無いために例えばノートパソコンを使用するためには立ちながら操作することになってしまう。

とはいえ、ドアの内側にはきちんと避難経路図も貼られていたり、「深夜22時から8時までは電話や会話は1階ロビーで」などと書かれていたりと、真面目さも伺えた。

ちなみにアメニティは部屋に常備されておらず、フロントで受け取った。ビニール袋の中にはバブラシと薄めのタオル、そしてティッシュ。

さて、恒例の館内探検へと向かおう。

とりあえずエレベーターでまた1階へと降りれば、大きなテーブルが配置されたダイニング的なフリースペースがあり、壁面側がガラス張りになっているので、中からもそうだが外からも良く見える。

ホテル脇の道の斜め前には、ホテル來山などがある。以前にそちら側から眺めたら、インバウンド系と思われる宿泊客が楽しそうに談笑していたことがあった。なるほど、それがこの場所なのか、と合点がいった。

このスペースにはテレビもあり、電子レンジやオーブントースター、電気ポットもあった。しかも、無料のコーヒーやお茶、氷なども備わっていた。

それだけならまだしもキッチンまで。ガスコンロ(1階のほか、2・3・7・9階にも)はコインを購入するシステムのようだが、食器類も備わっているらしく、なるほどこれなら海外からのいわゆるバックパッカーも住みやすい。

僕は30代までバックパッカー&海外旅行雑誌のライターで、タイはバンコクのカオサンにしばらく住んでいたことがある。そんなスタイルの宿泊客はけっこう多くて、その行動は当時、カオサンに沈没していると表現されていた。西成のHOTEL SUNPLAZAⅡにしばらく沈没するのも悪くないな、と思った。

その他にも1階にはアルコール&清涼飲料水の自動販売機、そしてフロントが開いている7時~23時にはカップ麺などの食品も販売されていて、近所にコンビニがあるものの、ホテルから外に出ずに食料&ドリンクを調達することも可能。

また、1階奥には洗濯機&乾燥機もあり、まさに居住にも最適な作り。各階に男女別のトイレが設置され、なぜか8階にはパウダールームまで。まさに1泊3,000円の面目躍如だ。

その後、僕は夜の西成へと向かった。

とはいえ、今回は飲食店には行かず、徒歩約1分のコンビニ「ファミリーマート」へ。

2,000円分のクーポン券は界隈の飲食店で使用できるところも少なくなかったが、大阪府のそれはなかなかに優しく、有名店「551蓬莱」で豚まんや焼売などを、「りくろーおじさんの店」でチーズケーキなどを購入することも可能(店舗により不可の場合も)。クーポン券はそちらで使用することにして、ホテルに電子レンジもあったので、夕食関係はコンビニと決めたのだ。

そして、3畳一間でひとり居酒屋スタート。テーブルの高さゆえに、立ち飲みスタイルになったのだが(汗)。

なお、ホテルの正面入口はセキュリティのために23時に閉まるが、暗証番号を入力すればドアが開くので実質24時間入退館できる。

翌朝、チェックアウトは10時までなので、それまでにシャワールームへと向かった。これまた何の問題も無く、シャンプーやボディソープも常備され、清潔感のあるルームだった。

しかも男性大浴場もあった(午前7時半~10時と午後5時~10時半)。今回は利用しなかったが、ちょうど誰もいなかったので覗いてみれば、こじんまりしているけれど綺麗な浴槽に、洗い場が2か所、そしてシャワーの場所。1泊1,000円台の西成ホテルとは、明らかに格が違った。

無料のコーヒーを部屋へと持ちこみ、つかの間のゆったりとしたひと時を堪能。

そしてチェックアウト後、動物園前駅へと向かった。

晴れていた。駅のホームは改装真っ只中だった。

西成界隈もどんどん綺麗になっていく。そんな事を思いながら、僕は梅田方面への車両が来るのを待った。

■プロフィール 
はんつ遠藤
1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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