ANA系新ブランド「AirJapan」、まずは東南アジアへ 「タイ航空やシンガポール航空と勝負」

ANAホールディングスは、中距離国際線の新ブランド「AirJapan(エアージャパン)」の客室仕様を発表した。ボーイング787-8型機を使用し、全席エコノミークラスの「3-3-3」配列で324席を配置する。

機材は現行のANA機を改修して投入する。初号機はJA803Aとなる見込みで、まずは1機でスタートする。その後毎年2機ペースで追加投入し、2025年度末までに6機体制とする計画。

シートピッチはフルサービスキャリア(FSC)のエコノミークラスと同程度の32インチ(約81センチ)、リクライニング幅は6インチ(約15センチ)。全席に充電用のUSB type-Aポート、type-Cポートを備える。個人用モニターはないが、機内Wi-Fiを使ったイントラシステムでハリウッドの新作映画などのビデオプログラムを配信し、乗客自身のスマートフォンやタブレット端末で視聴できる。

生地には合成皮革(ウルトラレザー)を採用した。本革や塩化ビニールに比べて大幅に軽量化でき、運航時の二酸化炭素(CO2)排出量削減が見込まれる。さらにダークグレーのプラスチックと組み合わせることで、現代的でプレミアム、統一感のあるデザインに仕上げた。カラーリングはグレー地にブランドカラーの曙色のステッチを施し、落ち着きあるデザインにした。デザインはイギリスのAcumen(アキュメン)が担い、座席はフランスのSafran(サフラン)の「Z110i」を採用した。

さらに、カーペットはBotanyと共同で再生ナイロンを採用し、AquafilのEconylヤーンを使用し、グレーやブルー、ピンクの配色を施した。カーテンもピンクから温かみのあるグレーへと流れるグラデーションデザインとしている。

ブランドデザインはランドー&フィッチが手掛け、ブランドと機体デザインは2022年3月に発表している。ブランドコンセプトは「Fly Thoughtful」。「Thoughtful」には、気遣いや思いやり、やさしさといった意味がある。ロゴは、「AirJapan」の「r」と「J」をモチーフに、手と手が織り成すやさしさをイメージした。ブランドカラーは藍色と曙色を組み合わせている。

ANAホールディングスは、ランドー&フィッチとアキュメンに対して、プロジェクト開始当初にブランド構築を以来し、両社はワークショップを何度か行い、ブランド戦略の共有や、ブランドのカラーパレットを機内でどのように「思慮深く」解釈できるかを議論したという。「曙色」は機内インテリアではあまり活用されていない色だという。

機内食は有料オプションとなり、事前に予約が必要なメニューと機内で注文できるメニューを別々に用意する。機内では乗客自身のスマートフォン等で注文する。事前予約メニューはメインディッシュになるようなボリューム感のあるものを、機内で注文できるメニューは軽食やおつまみのようなものを想定して開発中。フードロス削減のため、機内で注文できるメニューはレトルトやフリーズドライ食品が中心になるという。ドリンクも基本的には有料となる見込み。

搭乗時に機内で流すボーディングミュージックは、東京藝術大学との産学連携としてコンペを行い、応募22作品の中から大学院修士課程の冷水乃栄流(ひやみず・のえる)さんの作品「あい」に決定した。和楽器と洋楽器のアンサンブルで、「伝統と現在が出会う新しい日本らしさを表現した」(冷水さん)という。タイトルの「あい」には、ブランドカラーの「藍色」や「愛」、人と人の「出会い」などの意味を込めた。

▲エアージャパン 峯口秀喜社長

成田空港を拠点に、2024年2月から東南アジア路線に就航する。具体的な就航地は夏頃に発表する予定。中期的には関西空港への就航も計画しているが、拠点はあくまで成田空港のみだという。従来のFSCや格安航空会社(LCC)とは一線を画すハイブリッドキャリアという位置付けで、手頃な価格ながら快適な機内空間を提供するとしている。具体的な運賃設定は未定だが、峯口秀喜社長は会見で、「他のLCCや、タイ航空やシンガポール航空などアジアのFSCと勝負していかないといけない。他社の値段を見ながら価格設定を考えていく」と話した。