ANA、最優秀空港に庄内空港 高評価の裏に現場発案の独自アイディア

全日本空輸(ANA)は、就航空港の定時性やサービス品質を評価して表彰する「ANAクオリティアワード」を東京・羽田の総合訓練施設「ANA Blue Base」で開催した。2023年度の最優秀空港には庄内空港が選ばれた。

同アワードは2007年に始まり、今回で17回目。コロナ禍で2020年度はオンライン開催、2021年度・2022年度は中止となっており、対面では4年ぶりの開催となった。これまでは都内のホテルで開いていたが、ANA Blue Baseの運用が2020年に始まったことから、初めて同施設のカフェテリアスペースが会場となった。

例年は国内線と国際線の2部門に分けているが、国際線は全空港を公平に審査できる水準まで旅客数が戻っていないことから、今年度は国内線部門のみの開催となった。対象は全国50空港で、旅客数と貨物取扱量の規模によりA〜Dの4グループに分類され、安全性、定時性、快適利便性の3つの項目を評価する。4グループでそれぞれ1位〜3位が決まり、最優秀空港は各グループの1位の中から選ばれる。

各グループで1位に選ばれたのは、Aグループが松山空港、Bグループが小松空港、Cグループが庄内空港、Dグループが紋別空港だった。表彰式で最優秀空港が発表されると、庄内空港から来場していた5名の代表メンバーが喜びを分かち合った。

同空港が最優秀空港に選ばれるのは初めて。地上業務を受託する庄交コーポレーションの石川愛さんは、「所長がいつも的確なアドバイスをくれるおかげ。チームそれぞれの取り組みを全体でブラッシュアップしている。それを認めていただけた」と顔をほころばせた。

同空港では利用客の満足度やサービス品質の向上に向けた委員会を組織し、毎月意見を交換しあっているという。その中で生まれたのが、「いちばんのりチケット」や「スタンバイディスプレイ」といった取り組みだ。

いちばんのりチケットは子どもに対してカウンターで配布しているもの。搭乗に時間がかかることが多い家族連れに余裕をもってゲートに来てもらえるよう、搭乗締め切り時刻の35分前までにゲートに着くと、特製のステッカーと交換できる仕組みにした。

▲いちばんのりチケットを紹介する庄内空港の石川愛さん(左)と工藤久奈さん

スタンバイディスプレイは、接客のための案内情報やマニュアル、規定などを、グランドスタッフが持つタブレット端末ですぐに呼び出せるようにしたもので、ベテラン社員も新人も均質なサービスを提供できるようにした。

表彰式の中でこれらの取り組みを紹介した工藤久奈さんは、「コロナ禍で暗い3年間でしたが、どうしたらお客様に喜んでいただけるのか、全員が考えていました」と振り返る。

行動制限が続いていた当時は、146席の飛行機に乗客が2人だけということもあったという。先が見通せず不安が募る中、乗客から「この便が飛んでいるから会いたい人に会えています」と感謝を伝えられた。

「1人でも2人でも利用してくれるお客様がいる。ANAを応援してくださるお客様の声に励まされて、今を迎えられました」と涙を見せた工藤さん。「これからも頑張らないといけないと実感しています」と気を引き締めた。