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ブッキング・ドットコムの支払い遅延問題、炙り出された宿泊業界の現状【永山久徳の宿泊業界インサイダー】
ここからは仮説となる。ブッキング・ドットコムの資金繰りが危ういのではないかという説を唱える人もいるが、そうであれば振込金額の大きい宿泊施設から遅延が起きるはずだ。しかし、そのような傾向は見られなかった。むしろ、精算額が数万円と少額の施設に対して多く遅延は起こっている。となると、資金繰りに原因を求めることは論理的ではない。
このことと、ブッキング・ドットコムが発した「新たな決済プラットフォームに移行する過程で発生したもの」であり「大半の支払い作業はすでに再開されているものの、予期せぬ技術的な問題が発生したために、一部のパートナーへの支払いが遅延している」というコメントを繋ぎ合わせた場合、ブッキングドットコムの決済プラットフォームと日本の金融機関における決済システムとのマッチングに問題が生じているとは考えられないだろうか。
欧米で企業間もしくは個人間で決済を行う場合、IBANという共通番号を介するのが一般的だ。互いのIBANを確認できていれば、スマホを使いチャット形式で金額を入力するだけで3秒もあれば送金できる。
対して、日本における送金は我々が日頃行っているように、金融機関名、支店名、口座種別、相手先の名称をすべて記載(入力)しなければ進まない。記載フォームも金融機関の種別によって異なる。手入力して数人でチェックするには10分はかかるだろう。
もし、本当にブッキング・ドットコムの内部でシステム異常による送金トラブルが発生しており、限られたマンパワー、限られたリソースで振込業務をイレギュラー処理しようとすると、3秒で終わる振込と、10分かかる振込のどちらを優先するだろう。香港やシンガポールにIBANは無いが、まだ英語で入力と確認ができるだけ作業順位は上だろう。そう考えると遅延のパターンと合致する。繰り返すがあくまで仮説だ。
更に日本に送金データが入っても、金融機関ごとにマネーロンダリング対策にための処理方法が異なるようだ。事業者に根拠となる請求書の提出を求める金融機関や、イレギュラーの振込に対して調査を行う金融機関もある。その手間に対して数千円の換金手数料もかかるのはザラだ。どうも日本側にもいくつかのボトルネックがあるような気がしてならない。
もちろん平時であれば、このような問題も表面化せず、双方のシステム上で解決できていたのだろうが、トラブルをきっかけに日本のガラパゴスがまた一つ浮かび上がったことが今回のブッキング・ドットコム問題である可能性もあるのだ。
私は決済システムの専門家ではないし、フィンテックにも疎い属性だ。詳しい識者の見解を待ちたい。