内陸国の“ラオス鉄道”に乗ってみたら、“まんま”中国の鉄道だった件【レポート】

ラオス人民民主共和国はタイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、そして中国に囲まれた内陸国である。首都のビエンチャンは、東京から直線距離で約4,000キロ。ベトナムのハノイやタイ・バンコクからは至近だ。

ただ、国土の多くを山岳や高原地帯が占めており、海がない内陸国であるため物資に乏しく、東南アジアで最も貧しい国の一つといわれてきた。そんな状況がいま変わりつつあると聞いて、筆者は、ラオスに向かった。

ラオスの首都ビエンチャンと中国は雲南省、昆明を結ぶ中国ラオス鉄道。国全体を走る鉄道がなかったラオスに対し、中国が技術含め援助する形で建設された。中国にとっては、初めての国境をまたぐ形での高速鉄道(正確には運行速度が時速160キロに制限された準高速鉄道)の運行となる。

中国の高速鉄道が、日本の新幹線と異なる点に、旅客列車と一緒に貨物列車も走行することがあることが挙げられる。中国ラオス鉄道も貨客両方で営業しており、両国間を旅客列車はもちろん、貨物列車も行き来することができる。並行して計画・建設中の高速道路とあわせて中国とラオスの間の大動脈が形成され、中国の「一帯一路」構想を強力に推進していくことになる計画だ。

ただ、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響をもろに受け、強化された検疫体制のため、貨物列車は国境を越えた直通運転を行うが、旅客列車は中国国内およびラオス国内のみの運行という状況が続いていたが、感染症を取り巻く状況の鎮静化をうけ、念願の直通旅客列車が2023年4月から運行開始されることになった。

筆者は、各国への渡航が徐々にできるタイミングを見計らい、2023年2月にラオスに向かった。計画していた段階では、中国への渡航はまだ現実的に可能な状況ではなく、ラオスで中国の鉄道に思いを馳せるつもりであったが、執筆時点では中国を含めたほとんどの国でコロナ禍前と同じように渡航ができるようになった。今後も各国間の交流が活発になり、人々の移動を取り巻く状況も加速度的に変化していくだろう。

今回の記事では、中国ラオス間の旅客列車の直通運転が開始される少し前、2023年2月の中国ラオス鉄道のラオス側の様子をお届けしたいと思う。

筆者は東京在住なので、まずはラオスに向かわないといけない。日本からラオスへの直行便は運航されていないので、タイ・バンコクまで空路でアクセスし、バンコクからラオスとの国境の町ノーンカーイまでの夜行寝台列車に乗り継いだ。

今回は中国ラオス鉄道の記事なので、詳細は省くが、バンコクからノーンカーイまでの夜行列車は快適そのもの。2等車は空調完備の2段寝台。線路と平行して寝台が設置されており、下段なら窓から流れゆくタイの景色を眺めることができる。中国国鉄の寝台は枕木に平行の3段寝台であるが、同じクラスとして比較してみてみると、タイ国鉄のほうが快適かもしれない。寝台の大きさもゆとりがあり、少し大柄な筆者もほとんど窮屈することなく過ごせた。

ノーンカーイでは、ラオスへの国境列車に乗り換える。機関車に客車が2両。貨車と併結することもあると聞いていたが、この日は機関車+客車2両のコンパクトな構成だった。同じ旅程をたどったと思われる人が20~30人ほど、そして謎の自転車乗り団体が10人余。国境を渡る橋が自動車と鉄道の利用に制限されていることから、輪行するようだ。乗客全員がこの駅でタイ王国から出国する手続きが終わるのを待ったため、始発駅にも関わらず、およそ1時間遅れとなった。

珍しい併用軌道の橋を渡りながら国境を越える。併用軌道とはいっても、1日2往復の列車が走るときは車の交通を遮断するので、厳密にいえば空間的併用であるが、時間的併用ではないとでもいえばよいだろうか。

ラオス側ターナレーン駅にはものの数分で到着。ここから鉄道の接続はない。このため、筆者を案内してくれる大変ありがたい協力者の方が出迎えて下さった。普通は、ここから先は「ミニバス(東南アジアではおなじみ、ある程度人が集まったら運行する、時刻などが定められていない10人程度の乗合自動車)」がとまっており利用できる。これに限らず、ラオス国内の交通事情は非常に悪く、こういったミニバスによって交通が支えられているといっても過言ではない。

ターナレーンでは、早速車で駅から少し離れて、乗ってきた列車がタイに戻る様子と、国境越えで運行されているバスを見学・撮影する。運行しているバスの中には、京都市バスから譲渡された日本製のバスも混ざっており、大変興味深い。またほとんどのバスは客を満載して走っており、タイ・ラオス間の人々の流動の大きさを感じることができた。

この日は、国境の町ターナレーンから少し移動して、ビエンチャンの街並みを楽しむことにしていた。といっても、ラオスの国は、タイ・バンコクやベトナム・ハノイと比較すると少し田舎っぽさが残る。街の公共交通機関はあまり発展しておらず、観光客はもっぱらバスで移動することになる。流しのタクシーもほとんどおらず、ラオス独自のライドシェア「Loco」を消去法的に使うことになった。日が暮れた後、タイ国境を眺めながら食事をとり、翌日の待ちに待った中国ラオス鉄道乗車のために、早めに休むことに。

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