2024年はどうなる? 旅行業界激動の2023年を10本の人気記事で振り返る【コラム】

2023年も激動の1年だった。感染症の影響が大きく和らぎ、国際的な往来が活発になった。一方で、記録的な円安、人手不足などにより、旅行業界は激動の1年であったのではと考えている。

この記事では、毎年恒例ではあるが、人気記事10本をもとに、2023年を振り返ってみようと思う。

「全国旅行支援」の存在感大きい2023年

Go To トラベルキャンペーン 事務局 旅行者向けサイト

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による観光業界の需要創出のためスタートした「Go To トラベルキャンペーン」。その後継の支援制度として2022年から実施されたのが「全国旅行支援」だ。

楽天トラベル(全国旅行支援)

2023年の人気記事としては、下記の記事がランクインしている。なお、いずれの記事も記事初出時の情報であることに注意されたい。

楽天トラベル、「全国旅行支援」の予約受付再開 16都県対象(6位)
楽天トラベル、「全国旅行支援」の予約受付再開 東京や大阪など9都府県(8位)

この「全国旅行支援」も、感染症の沈静と旅行需要の回復に伴い、徐々に縮小。2024年も一部の自治体で継続されるものの、これらの支援制度により、大々的に需要を創出する時代は終わったといっても過言ではないだろう。

「旅行支援」縮小で主体的な需要創出にシフトする難しさ

東北新幹線 E5系

コロナ禍の間、旅行業界は支援頼みであったことは否定できない。国内の旅行者も同様に、支援による割引等に期待してしまうところはあった。

それらの支援が縮小・終了する際の出口戦略、需要創出が極めて重要であるが、一部のインバウンド需要が旺盛なサービスなどを除き、なかなか難儀しているように見える。

そんな需要創出のセールの話題が、人気記事にランクインしている。

JR東日本、1万円で全線1日乗り放題 平日限定、新幹線もOK(1位)
東京〜新青森間8,740円 東北新幹線「はやぶさ」、2週間限定で半額に(5位)
東京〜盛岡駅間が7,140円など 東北新幹線、期間限定で最大半額(7位)

JR東日本の新幹線のセールや乗り放題券の話題が上位にランクインした。惜しくも選外となったが、ANAやJALなどいわゆるフルサービスキャリア(FSC)の期間限定セールも大いに話題になった。

一方、2023年、本誌では定番となっているLCCのセールは例年に比べてあまり話題にならなかった。燃油価格の高騰による環境変化や、国内線では先述のFSCのセールの影響、国際線では海外LCCとの競争激化による存在感低下などが考えられる。

こちらも選外ではあるが、2023年12月から2024年1月にかけてジェットスター・ジャパンの労働組合がストライキを実施することも話題になった。競争激化・人手不足などでLCCは総合的に苦しい状況が続くのではないだろうか。

アフターコロナで見直す航空業界の未来

ここまでは、日本中心の話題をお届けしてきたが、海外では、アフターコロナによる変化がダイナミックに起きている。その一例は、「飛行機の”2階建てシート”、最新版お披露目 日本の大手航空会社も関心」(4位)だ。これに限らず、航空会社の戦略は大きく変化しつつあり、航空会社に対応するように、航空業界全体も変化していることが露わになった。

ANAとJALの上級会員囲い込み戦略も変わりつつあるようだ。

ANAは度々ステイタス判定のプレミアムポイントを2倍にするキャンペーンを実施しており、上級会員を増やして囲い込みを強化したい狙いが透ける。上級会員向けアセットを有効に活用したいようで、コロナ禍には国際線のANAラウンジをプライオリティパス所有者向けに開放する施策を実施した。

2023年に入って、ラウンジが混雑している状況が多く見受けられるようになり、現在、プライオリティパスで利用できるANAラウンジは関西国際空港のみに縮小。プライオリティパスによる羽田空港ANAラウンジ利用終了を報じた記事が、10位にランクインした。

JALは、ANAと同時期にステイタス判定のFLY ONポイントを2倍とする施策を実施していたものの、2024年からはステイタスの一部を変更し、入会することで、期限の定めなくラウンジを利用できる「JALグローバルクラブ(JGC)」の入会基準を実質的に厳格化する(解説記事が3位にランクイン)。ANAの同様の制度「スーパーフライヤーズカード(SFC)」は2023年までに変更などはアナウンスされておらず、対照的な動きだ。今後両社がどのように動くか、2024年も目が離せなさそうだ。

新デザインパスポート普及の裏でひっそり消えたもの

何はともあれ、感染症の影響が小さくなり、国際往来が増えた1年であったのは事実。空港では、浮世絵の描かれた日本の新パスポートを見る機会も増えた。一方、ひっそり消えた「増補」制度を取り上げた記事が9位にランクイン。

コロナ禍前は当たり前だと思っていたものが、いまはない…といった経験、皆さんも心当たりがあるのではないだろうか。

変化の大きい旅行業界だからこそ、ユニークな施策に期待?

黄金のICOCA

駆け足で2023年の人気記事を振り返ってきたが、最後に取り上げる記事は、「黄金のICOCA」(2位)。「ICOCA」自体はよく知られているものの、「黄金のICOCA」は知られていないというギャップが、多くのアクセスを集める主因となったようだ。

旅行業界は変化が大きい。昨日の非常識が今日の常識になっていた、ということは別に珍しくない。そんな変化のなかに、何か面白いものがないか、TRAICYでは引き続き探っていきたいと考えている。

2023年もありがとうございました。ぜひ2024年もご愛読のほど、よろしくお願いいたします。