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ANA、空港特殊車両に廃油のバイオ燃料 CO2削減の動き、航空機以外でも加速
全日本空輸(ANA)は5月9日、航空機の運航を地上で支援する特殊車両(Ground Support Equipment/GSE)の燃料として、廃食油などが原料の「リニューアブルディーゼル(RD)」を使用する実証を羽田空港で始めた。2025年3月頃まで、利用上の課題や有用性を検証しね将来的に本格導入を目指す。
RDは廃食油や非可食油などを原料に生産される次世代バイオ燃料。軽油の代替燃料として二酸化炭素(CO2)排出量を70〜90%削減できるとされている。性質はGSEに従来使用されている通常の軽油と同等とされており、既存の車両や給油設備にそのまま使用できる。持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel/SAF)の製造過程で同時に生産される連産品で、普及によりSAFのサプライチェーン強化にもつながる。
ANAグループは、2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つとして、2030年度までに航空機の運航以外で発生するCO2を2019年度比で33%削減することを目標に掲げている。現在進めているGSEの電気自動車(EV)化などと並行してRDの活用にも取り組み、目標達成に向けた動きを加速させる。
実証は羽田空港で稼働する約2,800台のGSEのうち、貨物の積み下ろしに使うハイリフトローダー10台と、航空機を牽引するトーイングトラクター10台、旅客の乗降に使うタラップ車6台の3車種計26台が対象。RDの車両への影響や、給油体制などの課題、有用性を検証する。対象車種は進捗状況に応じて拡大する計画。ANAによると、RDをGSEに使用するのは国内で初めて。
9日に羽田空港で公開された実証では、あらかじめ燃料タンクを空にしたハイリフトローダー1台に、給油車両を使ってRDを給油。大阪/伊丹から到着したNH20便(ボーイング787-8型機、機体記号:JA815A)のハンドリング業務に使用され、貨物を取り下ろしたり、折り返し便の運航に向けて貨物を積載したりした。
RDはスペック上は軽油と同じように使用できるものの、税制上は燃料炭化水素油として扱われる。軽油と混和すると不正軽油に該当するため、初回の給油時はタンクから軽油を完全に抜き取り、RD100%で使用する必要があるという。
ANA経営戦略室 企画室GXチームの乾元英マネージャーによると、全てのGSEをEV化するのは、車種の選択肢が少ないことや、空港内の充電設備が十分でないことなどから現実的に難しい。RDの実証は脱炭素化に向けた選択肢を広げる狙いがあるといい、乾氏は「経済合理性を踏まえ、ベストミックスを検証する必要がある」と話した。