引退のドクターイエロー、浜松工場で最後の2編成共演 本線では実現不可、先頭車同士の対面

JR東海は、東海道新幹線のメンテナンスを行っている浜松工場の公開イベント「浜松工場へGO」を開催した。コロナ禍前まで行っていた一般公開イベント「新幹線なるほど発見デー」に代わるもイベントで、今回は東海道新幹線開業60周年を記念して、引退が決まっている2編成の923形「ドクターイエロー」(T4編成、T5編成)を並べて展示した。

ツアーは首都圏や静岡・中部・関西地区の主な駅から団体専用列車に乗車し、浜松駅から引込線に入ってそのまま浜松工場に入場できるというもので、10月19日と20日の2日間、各日午前・午後の2回に分けて開催。JR東海によると、申し込み受け付けは9月3日午後2時から先着で開始し、6日午後7時時点で完売したという。

このうち19日午前の回には、東京・品川・新横浜・浜松の各駅から計約1,000名が参加した。N700S(J12編成)の団体専用列車は東京駅を午前6時54分に出発。各駅で参加者を乗せて浜松駅から引込線に入り、同8時50分頃に浜松工場に到着した。

▲浜松工場の手前では、東海道新幹線で唯一の踏切である西伊場第一踏切を通過

目玉のドクターイエローは、敷地内の広場に面した8番線に展示。豊橋方(西側)にJR東海所属のT4編成、浜松方(東側)にJR西日本所属のT5編成を縦列で並べた。両編成の先頭車が向き合う絶好の撮影ポイントでは、参加者が代わる代わる記念撮影を楽しんでいた。

JR東海によると、浜松工場で2編成のドクターイエローを並べて展示するのは今回が最後になるという。イベントを担当したJR東海 新幹線鉄道事業本部の佐治まさみさんは、「編成全体をきれいに写真に収めてもらうことを意識して、太陽の方向なども考えて展示した。縦列で並ぶのは珍しいので、楽しんでもらえれば」と話した。

イベントではこのほか、トラバーサーによる車両移動や車両床下の見学スポットを用意。また、軌道のメンテナンス作業で活躍するバラスト整理車(KVP-S)やクレーンワゴンなどの保守用車も展示され、参加者はスタッフの説明に耳を傾けていた。

ドクターイエローはJR東海が保有する923形0番台(T4編成)とJR西日本が保有する923形3000番台(T5編成)の2編成があり、T4編成は2001年9月、T5編成は2005年に運行を開始。T4編成は老朽化のため2025年1月での運行終了が決まっており、T5編成も2027年以降をめどに引退する。検測専用の後継車両は製造せず、2027年以降はN700Sに導入される検測機能で検査を代替する。

▲参加者に配られた記念品