現役整備士と学生が技術を競う、「航空機整備 技能コンテスト」開催

日本航空技術協会が主催し、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が協賛する「2024年度航空機整備 技能コンテスト」が、11月15日にANA Blue Baseで開催された。

このコンテストは、現役の航空整備士と学生がそれぞれチームを作り、日頃の仕事または学習で得た技術を競うことを通じて、技術の一掃の向上を図るとともに、整備という仕事の魅力を社会に訴求することで、裾野拡大を目指すことを目的としている。

国家資格試験の内容を一部抜粋した、航空整備士の基本作業となる種目となる、「電気計測」と「機械計測」、「締結」、「リベットの取り外し」、「パネルの取り付け&取り外し」の5つの競技を実施。各チームは3人のメンバーで構成され、このうち「パネルの取り付け&取り外し」は全員で取り組む団体種目、残りの4競技は個人種目となっている。

コンテストには、JALエンジニアリング(2チーム)と日本トランスオーシャン航空(JTA)のJALグループ各社と、e.TEAM ANA(2チーム)、ピーチ・アビエーションのANAグループ各社、東日本航空専門学校、日本航空大学北海道(2チーム)、国際航空専門学校(2チーム)、中日本航空専門学校、大阪航空専門学校、第一工科大学の専門学校・大学の6校から、14チームが参加した。

▲マルチテスター、テストボックスを使用して直流電圧・直流電流・抵抗値を測定する「電気計測」

▲最小読み取り目盛りが0.001インチのM型ノギスを使用して、対象部品の外径を測定する「機械計測」

▲セーフティワイヤーを使用して3つのボルトに回り止めをする「締結」

▲指定された5か所のリベットを、部材に傷をつけることなく取り外す「リベットの取り外し」

▲今回の競技で唯一の団体種目となる「パネルの取り付け&取り外し」

航空部品を想定した訓練機材を使い、日々の作業の技術力を審査する。すべての競技には制限時間が設定されており、作業の正確さだけでなくスピードも審査基準のひとつとなっている。そのため「機械計測」では、指定された部品のサイズを正確に測定することはもちろん、作業完了までの時間も順位を決める重要なポイントになっている。

▲個人種目は5分、団体種目は10分の制限時間があり、普段の作業も焦りが見えてしまうケースもあった

「リベットの取り外し」では部品を傷つけないように取り除く正確さとスピードが審査基準となっており、万一部材を傷つけた場合は、評価対象外と厳しい規定となっている。

競技は全14チーム横並びで審査するため、整備会社チームの出場者は入社2年目までの社員となっており、専門学校/大学のチームとそこまで経験の差がでないように考慮されている。

▲審査員は国土交通省航空局の職員などが担当

審査の結果、総合優勝はe.TEAM ANA②が受賞。「企業と専門学校の学生が交流を持てる機会がないので、貴重な経験だった。航空業界を支えるにはこういった機会が必要だと思うので、今後もあれば参加していきたい」とコメントした。

▲総合優勝のe.TEAM ANA②

敢闘賞は国際航空専門学校①が受賞。「これから就職ということになるが、これからも技術の向上に努めていきたい」と受賞に際してコメントした。

▲敢闘賞の国際航空専門学校①

企業に勤めるプロの整備士と学生が一緒となったコンテストを行うことについて、主催した日本航空技術協会の吉田保夫常務理事は、「まだ入社して1年目、2年目の方を対象としているので、基本土俵は同じだと思っている。学生から見たときには、確かにプロはプロだけれども、僕ら負けていないよねと感じてもらえる機会になるのではないか」と説明。またイベントの規模について「今年は企画の段階から参加チームを3倍ぐらいにしたいと準備してきた。結果的には去年よりも2団体増にとどまっているので、そこはさらに頑張らなきゃいけない」とのこと。学生チームは試験などのスケジュールもあり出場を辞退しているケースもあるとのことで、開催時期などが今後の課題と言えそうだ。

▲左からANA業務推進部の榛村太亮氏、日本航空技術協会の吉田保夫常務理事、JALエンジニアリング総務部の南場太郎氏

JALエンジニアリング総務部の南場太郎氏はコンテストについて「航空会社そして整備士の仕事というのがあるので、自分も頑張ればそういったところで仕事ができる、学校で勉強したことが生きると感じてもらって、ぜひ採用、就職につなげていただきたい」と話している。

ANA業務推進部の榛村太亮氏も、実際に訓練を行っているANA Blue Baseを会場とすることで「本物の飛行機を扱っている場所で学生さんにプロの近くで自分の作業を経験できる、プロを感じられる非常にいい機会だと思う。航空整備業界は非常に小さい、世間一般にそれほど知られている業界ではないが、一体感を持って業界と学生さん全部でやっていくことが、いい親密感というのを生んでいるのではないか」と、航空整備業界全体で技術者の育成などに取り組んでいく必要があると話していた。