HIS、雇用調整助成金などを不正受給 約62.5億円を自主返還

エイチ・アイ・エス(HIS)

エイチ・アイ・エス(HIS)は、受給した雇用調整助成金などの一部が過誤に当たると判断され、1月22日付で支給決定取消と返還通知書を受領したと明らかにした。

雇用調整助成金が62億5,451万9,769円、緊急雇用安定助成金が195万1,278円の、合わせて62億5,647万1,047円を自主返還する。

HISでは、2020年3月から2022年12月までの間、雇用調整助成金を受給していた。2024年4月23日、会計監査人であるトーマツに対し、HISで勤務実態がある日を休業日として雇用調整助成金などを受給していたケースがあるのではないかという情報提供があったという。

HISはこれを受けて調査チームを組成し、同4月から6月中旬にかけて、外部専門業者に社内関係者の業務用メール・チャットなどを対象とした調査を実施し、分析結果を精査した。さらに社内関係者へのヒアリング、勤怠システムと雇用調整助成金などの申請内容の対照、従業員全員に対するアンケートといった初期調査を行った。

結果として不正受給を疑わせる事実は発見されなかった一方、雇用調整助成金などを申請した休業日の一部で就業があったことが判明したことから、同6月24日に東京労働局を訪問し、初期調査の結果に基づき、HISが不適正であったと判断した金額の返還を申し出た。

一方で東京労働局からは、初期調査の結果は返還額の判断材料として不十分であるといった指摘がなされたことから、同9月からにアンダーソン・毛利・友常法律事務所の弁護士に相談の上、東京労働局との面談を行い、客観的なデータの取得や精査を行った。

この結果、HISが雇用調整助成金などの受給対象とした休業日のうち、約2割強の休業日で従業員の就労があったと判断せざるを得ず、さらにHISが時間単位ではなく日単位で雇用調整助成金などの受給申請を行っていたことから、ある申請日に就労があった場合、それが1件のメール返信といった短時間の作業であっても、日単位の受給申請が事実に即したものではないといわざるを得ないことから、当該申請日に関して受給した金額の全額を返金すべきとの判断に至ったという。

就労があったと判断した申請日のメール・基幹システムなどの操作履歴が確認された回数は、1回が30.6%、2回〜5回が34.9%、6回〜10回が12.1%、11回以上が12.8%、客観的データによる調査ができなかったのが9.5%だった。

HISでは期間中、雇用調整助成金を240億6,602万3,578円、緊急雇用安定助成金を1億9,858万822円の計242億6,460万4,400円を受領していた。

この他に不正受給があったナンバーワントラベル渋谷は約1億979万9,914円、それ以外の連結子会社が約42.9億円の雇用調整助成金を受給している。

■経緯
2024年4月下旬 会計監査人に対し、HISの雇用調整助成金について情報提供。会計監査人より当社へ、情報提供があった旨の連絡を受ける。社内に初期調査チーム組成、自主的に調査開始(~6月中旬まで実施)
2024年6月下旬 申請に誤りがあったと判断した受給分の返還を、HISから東京労働局に申し出
2024年9月上旬 アンダーソン・毛利・友常法律事務所にデータ検証を委嘱(目的:返還額算定の客観的データ取得および精査)
2024年11月中旬 会計監査人より、HIS連結子会社での類似事象の有無について確認の依頼を受ける
2024年11月中旬 アンダーソン・毛利・友常法律事務所所属弁護士とKPMG FAS所属公認会計士に調査を委嘱(目的:当該調査の信頼性担保の確保)
2024年12月13日 専門性・客観性を確保した特別調査委員会を組成。グループ全体の調査と原因分析と再発防止策の提言を委嘱
2024年12月下旬 HISの見解を東京労働局に報告
2025年1月22日 東京労働局から雇用調整助成金等の支給決定取消・返還通知書を受領
2025年1月27日 HIS取締役会にて自主返還することを決議

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