
ANAマイレージクラブ、「スターアライアンス世界一周特典航空券」の新規発券終了
4月8日、ANAマイレージクラブの国際線特典航空券の制度変更が発表された。どういう点に注目していけばよいか、分析していこう。
ANAマイレージクラブには3種類の、マイルで引き換えられる特典航空券がある。「ANA国内線特典航空券」「ANA国際線特典航空券」「提携航空会社特典航空券」の3つで、国際線に搭乗できるのは、ANA国際線特典航空券と提携航空会社特典航空券の2つだ。
ANA国際線特典航空券は、基本的にANAグループ便にしか搭乗できない。提携航空会社特典航空券は、スターアライアンス加盟航空会社など、全日本空輸(ANA)が提携する航空会社の運航便に搭乗できる。
今回、ANA国際線特典航空券と提携航空会社特典航空券について、いくつかの変更が発表されたので、分析していく(いずれも6月24日予約・発券分より変更が適用される)。
主に、ハイシーズンに利用する場合とビジネスクラス・ファーストクラスに利用する場合に、必要マイル数が増加する。シーズンによるマイル数変動がない提携航空会社特典航空券では、若干異なる。
日本発着ハワイ行(ハイシーズン)の場合、ANA国際線特典航空券の必要マイル数(往復)が、エコノミークラスで65,000マイル(改定前:43,000マイル)、ビジネスクラスでは135,000マイル(改定前:90,000マイル)となる。
日本~ハワイ間のハイシーズンは2025年の場合、1月1日~3日、4月25日~5月11日、7月18日~8月24日、12月15日~31日(往路・復路の第1区間基準)。年末年始、ゴールデンウィーク、夏休み期間が対象になっている。
2024年4月にもビジネス・ファーストクラスを中心に特典航空券の必要マイル数を引き上げていて、マイル数の改定は2年連続となる。
ANA国際線特典航空券・提携航空会社特典航空券ともに、現在は往復旅程のみの設定だが、片道旅程に対応する。必要マイル数は往復旅程の概ね半数程度。
例えば、日本〜韓国・ロシア1間のエコノミークラス(ローシーズン)は片道6,000マイル、日本〜ハワイ間のファーストクラス(ローシーズン)は同60,000マイルなどとなる。
さらに、特典航空券の乗り換え条件も変更になる。
ANA国際線特典航空券では、変更前は日本国内で往路・復路各2回まで可能だった乗り換えが、日本国内で往路・復路各1回までに変更される。このため、ANAグループ運航の国際線が就航している東京や大阪から直行便が就航していない一部の国内空港(例:利尻、対馬、五島福江など)発着では、ANA国際線特典航空券が利用できなくなる。
提携航空会社特典航空券を利用する場合、日本国内で往路・復路各2回まで、日本国外で往路・復路各2回まで、24時間以内の乗り換え可能だったが、ANA国際線特典航空券と同様に日本国内では往路・復路各1回までとなる。日本国外では往路・復路各2回まで乗り換え可能のままとなる。
提携航空会社特典航空券では、日本国内線がANA運航便のみの利用に限定され、AIRDO(エア・ドゥ)、アイベックスエアラインズ、オリエンタルエアブリッジ、ソラシドエア、スターフライヤー、日本エアコミューター、天草エアラインとの共同運航(コードシェア)便は利用できなくなる。このため、ANAグループが就航していない一部の国内空港(例:女満別や北九州など)発着では、提携航空会社特典航空券が利用できなくなる。
太平洋と大西洋を1回ずつ航空機を利用して横断し、東回りか西回りで世界一周ができる航空券で、最大12回のフライトができる。最大8回の途中降機(欧州では最大3回、日本国内では最大4回)、最大5区間での地上移動が可能で、利用できる航空会社が多く、寛容なポリシーであることから多くのマイラーに親しまれてきた。
筆者が注目する変更点は、やはりマイル数の増加が挙げられる。2024年に引き続き、ビジネスクラス・ファーストクラスや、ハイシーズンの利用をピンポイントに改定しているのが印象的だ。一方で、エコノミークラス、閑散期の利用などでは、マイル数の増加はごくわずかにとどまった。提携航空会社特典航空券のマイル数の増加も、エコノミークラスではそこまで大きくない。
しかし、マイル数が据置されたとしても、空席状況や、燃油サーチャージ額の変動(欧米往復で7.2万円超)など、特典航空券が利用しやすい状況であるとは断言できないため、注意が必要だ。
また、これまでは往復利用が前提だったため、往路に空席があっても復路に空席が見つからなければ利用できなかった。欧米路線を中心に特典航空券の予約がしづらい状態がコロナ後に続いており、片道利用に対応することで発券しやすくなるほか、異なる航空会社との組み合わせも容易になり、利便性が増す。
その他の変更点は、特典航空券を頻繁に利用する人や、最大限に利用したいという人にとっては影響が大きいかもしれないが、年に数回旅行をするものの、国際線の特典航空券を利用することは少ない、といったようなライトユーザーへの影響は少なそうだ。
とはいえ、街の物価が上昇しているように、マイルのインフレーションというトレンドを強く感じさせるものになった。貯めたマイルは計画的に利用するのが、賢い旅に必要なのは間違いないだろう。